いずれにせよ、万世一系という歴史を背景にした皇室を国の象徴と憲法の最初の1条から8条までで定め、実際上の元首として扱っていながら、その歴史認識を教えないというのはおかしな話だ。
一方、保守派も戦前の皇国史観を国民全体が受け入れろというのはやめてほしい。2684年前に建国されたとかいうのは非現実的だし、戦前の教科書などに書いていた歴史認識は、中世以来、仰々しく粉飾されたものであるものだと、私はこれまで指摘してきた。
ただ、『記紀』が編纂(へんさん)されたころの人々が、日向出身の武人が大和の橿原周辺に樹立した小王国が発展して統一国家になったという認識をもっていたのは確かである。それは中国の史書などとも整合性は高く、うそだという理由もないと思う。ちなみに私は、皇統に断絶がないということを学説としても支持している(詳しくは前述の記事)。
しかし、それは私の考えに過ぎない。国民の共通認識としては、神武創業と万世一系という歴史を皇室が大事にして祭祀(さいし)を行っていることを知り、それを信じようが信じまいが、敬意を払えばいいのだと思う。
この伝説を史実として認めるかどうかは自由だということを前提にした上で、2月11日を皇室の「創業記念日」とし、国民と政府と皇室がともに陛下のご健康と皇室の繁栄を願うことは、国際常識に沿ったものであり、反対されることもあるまい。
また、この日をナショナルデーとすることは、世界に向けて日本の国と皇室の古い歴史をアピールする効果的な機会になるはずだ。
2月11日をお祝いするのと交換条件としては、憲法記念日をもうすこし大事にするとかいうのも、一案だ。国家を大事にせずして憲法もなにもないし、憲法をあしざまにいって国家を愛せよと言ってもダメだ。
海外のナショナルデーは
どうなっているのか
最後に、海外のナショナルデーはどのようになっているか見ていこう。
伝説上の建国記念日を採用しているのは韓国だ。
10月3日の開天節は、紀元前2333年に檀君が北朝鮮で建国したという神話に基づき、建国を記念し、天に感謝する日である。ただし、これは歴史でなく神話の類いで、しかも、13世紀以前には語られていなかった話だ。檀君に起源を求める話は、中国や日本へ対抗するために近代になって出てきたものだ。