主婦がターゲット⇒テレビCMが有効

安達 商品の認知率を高めたいときに、有効な手法はありますか?

和佐 若い人の間ではテレビ離れが進んでいますが、P&Gの商材は主婦をターゲットにすることも多いので、テレビCMは依然として効果的です。

 テレビCMは15秒・30秒という短い時間で、訴求したいポイントをシンプルかつ明確に伝える必要があります。そのうえで、何回見てもクスッと笑えたり、共感できたりする「心地よさ」も盛り込まれていないと、視聴者の心を捉えることはできません。

安達 たしかに、つまらないCMだとすぐにチャンネルを変えられてしまいますからね。

和佐 つまり、広告も「エンタメの一部」であるべきなんです。

 テレビCMの事前テストでは、約400人に番組を視聴してもらい、映像内で流れた広告の印象や評価などをインタビュー形式で聞き取ることで、そのポテンシャルを測ります。

 このテストで一定の点数を下回ると、何千万円もかけて作ったCMであっても、「お蔵入り」となることがあります。実際、僕が最初に担当したCMは、日の目を見ないままになってしまいました。

安達 お金のことを考えると、もったいない気もしますね。

和佐 ただ、実際に流すとなると億単位のお金がかかるので、より大きな損失になってしまいます。もちろん、テストの点数が低くても、問題点をブラッシュアップして放映にこぎつけるケースもありますよ。

買い物に同行する「驚きの現場リサーチ」

安達 ほかに、マーケティングの手法でこだわっていた点はありますか。

和佐 P&Gでは、数値で可視化しづらい「消費者の習慣と行動」も重視しています。

 たとえば、洗剤の開発に当たっては、一般のお家を訪問して「洗濯の様子」を見学させてもらいます。前洗いや別洗いをするのか、柔軟剤は使うのか、どんなふうに干すのかなど、細かい部分までチェックして、開発の参考にするんです。

 あとは、買い物に同行させてもらいます。これは、商品の選び方や買う順番、買ったもののリサーチを行うためです。商品を「購入する場面」「使う場面」を両方ウォッチするということですね。

 商品開発もCM作りも、共通点は「直感に頼らない」ということです。データや消費者の習慣・行動といった「ファクト」をベースにしたマーケティングを徹底することで、長期にわたって利益を出し続けることができるんです。

(本稿は、『殻を破る思考法』の著者・和佐高志氏へのインタビューをもとに構成しました)

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