薄い答えしか得られない
「絶対やってはいけない」聞き方とは?
反対に、「○○を始めたいのですが、何をすればいいですか?」というように、いきなり「手段だけ」を聞くことは避けるべきだという。この場合、「何をやりたいか」は伝わっても、「なぜそう考えたのか」「どこまでできているのか」までは伝わらない。相手に共感してもらうことも難しく、一般論や薄い内容の答えしか得られない。
ちなみに山中氏は、居酒屋開業を思いつき友人の親などに相談した際、「居抜き物件に店を出すと安く済みそうだ」という現時点での考えを伝えていた。知ってか知らずか、相談内容に「現在地」を盛り込むことができていたのだ。
山中氏いわく「妄想レベル」の計画でしかなかったというが、それが相手に伝わったことで、「当時の山中氏」にピッタリ合った基礎的なアドバイスをもらうことができた。具体的には「(自分がしたい店づくりのために)店内を壊すのにはお金がかかるよ」といったツッコミがもらえたという。
この対話を通して、山中氏は「居抜き店舗は設備が元のままなので、内装などのオプションにこだわると、結果的に改修費などのコストがかさむ」という基礎知識が得られたのだという。
また、本書には「三つの型」の他にも、相談によって有益な答えを導き出すための具体的な方法がいくつか紹介されている。
その一つは「なぜ」「どうして」という問いかけだ。しつこく聞いて相手を不快にさせないよう気を配りながらも、相手の最初の答えに対し、「なぜそうなのですか」と踏み込んだ再質問をする。そのことで、まったく想定していなかった新しい気づきが得られるチャンスが増える。
例えば、山中氏は居酒屋を立ち上げた後、新鮮な野菜を仕入れたいと考え、知り合いの飲食店店長に相談した。すると「○○さんで野菜を仕入れているよ」との返事があった。その取引先を紹介してもらえば相談の目的は達成されるはずだが、山中氏は「どうして○○さんを使っているのですか?」と質問を重ねた。
すると「週3回配達してくれるから」という返答があり、野菜の鮮度を保つ上では「配達の頻度」が重要であるという知見が得られた。また「仕入れる量によっては直接農家さんから買う選択肢もあるよ」という答えもあった。山中氏には「農家との直接取引」という発想はなかったので、調達方法の幅を広げることにつながったという。