居酒屋開業の助けになった
「意外な人物」とは?
1982年生まれで、2003年に居酒屋を立ち上げた山中氏は、20歳前後の頃を「人生のどん底」にいたと振り返っている。地方出身で大学進学もできず、18歳で社会に出て、希望の職種への転職も叶わなかった。そのため「起業するしか人生を打開する方法はない」と思い詰めていたそうだ。
そんなあるとき、山中氏はもともと焼き鳥居酒屋だった居抜き物件と出合い、「これならコストもかからない」ということで飲食店経営を志した。結局は独力での開業が難しく、資金援助を求めることにしたのだが、相手はなんと「友人の親」。今にしてみれば、この人物に相談を持ち掛けたことが人生の転機になったという。
具体的なことは何も決めないまま相談に訪れた山中氏に、友人の親は「コンセプトは何?」「顧客ターゲットは何?」といった質問を投げかけた。おそらくビジネス経験が豊富な人物だったのだろう。問いに答えながら出資者と対話することで、山中氏は店づくりについての「戦略の立て方」を真剣に考えるようになった。
そこで学んだ方法論をもとに、多様な相手に相談を繰り返した結果、開店した居酒屋は予約が取れない人気店になったという。こうした「相談術」は、コンサルティング業界に活躍の場を移す際にも役立ち、先に述べた経営者としてのキャリアにつながったそうだ。山中氏の仕事人生に、相談というツールがいかに欠かせないものかがわかるだろう。
相談に盛り込むべき
「三つの型」とは?
そんな山中氏によると、一つの相談には次の「三つの型」を盛り込む必要がある。
・目的:自分がこれから何をやろうとしているのか。
・原体験:なぜそれを自分がやろうと思ったのか。
・現在地:やりたいことに対して、今自分はどの位置にいるのか。
このうち「目的と原体験」を伝えるのは、相手に共感してもらい、自分ごとのように考えてもらうためだという。こちら側の志(こころざし)や真剣さが伝わると、相手の「親身になって相談に乗ろう」というモチベーションも高まる。これは、企業経営で注目を集める「パーパス経営」にも共通している。「パーパス(企業の存在意義や志)」を明確にすることで投資家に共感してもらい、関係性を強化するというものだ。
また、相談の際に「現在地」を伝えるのは「今の自分」にピッタリ合ったアドバイスをもらうためだ。新しいビジネスをやろうと考えているのであれば、具体的な計画と現時点での進捗状況を詳しく伝える。それによって、すでに知っていることや終えていること、現段階では行動に移せないことを助言されるリスクを減らせる。