あえて「余白」を作った質問で
新たな選択肢を引き出す
一方、ビジネスの世界では「リサーチした結果、仕入れ先はA社かB社が望ましいという結果になりました。どちらが適切でしょうか?」などと選択肢を絞って相談する人がよくいる。
私見だが、これは上司に相談する際に模範とされる聞き方ではないだろうか。「一度自分なりに考えた」「上司の手をわずらわせたくない」ということをアピールしているのだ。上司の側も、提示された選択肢を元に、具体的な指示や助言を与えやすい。
だが“山中流”の相談では、あまりそういう言い方はしない。たとえ計画が煮詰まった段階であっても、あえてまだ固まっていない余白があることを相手に示す。その上で、「これはどう思いますか?」「こんなこともアリですかね?」「こんなこともできると思いますか?」などと、選択肢を広げるような聞き方をする。
限られた手段の中から選んでもらう聞き方だと、その範囲内にしか話が広がらない。それを避けるために、相手の柔軟性や発想力を信頼して、自分の考えの“外”にも話を発展させていく。そうすることで、別のもっと良い選択肢が見つかったり、これで決まりだと思っていたアイデアに意外な穴が見えてきたりする。
本書の要点を筆者なりにまとめると、相談には「質問して正しい答えを教えてもらう」といった受動的な姿勢ではなく、「お互いに意見を出し合いながら最適解を探す」という能動的な姿勢で臨むべきなのだろう。教えを乞うのではなく、ブレインストーミングに取り組むようなイメージだ。そして、答えは必ずしも一つだとは限らない。
本書で紹介される「双方向」の相談術は、起業を志す人だけでなく、一般的なビジネスパーソンにも十分に参考になる内容だ。ぜひ読んで実践し、周囲の助けを借りながらスキルアップしていただきたい。
(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)