70年代にさかのぼる犯罪の根深さ
埼玉県で日本語教師をする藤本美香子さん(仮名、60代)は、これまで多くのアジア人留学生の面倒を見てきた。その中でも、近年来日するベトナム人には「共通するある傾向が見られる」と言う。
「アジアから来る留学生はそれぞれに特徴があります。ネパール語やモンゴル語は母国語と文法が似ていることもあり、その国の出身者は日本語の上達が早い。インドネシア人の多くは主にイスラム教徒なのでお酒は飲まず、道に外れることが少ないし、カンボジアやラオスの留学生も信心深い。
そんな留学生が多い中で、ベトナム人が目立ってしまいがちです。ベトナム人留学生はお酒を飲む上、日本で悪いことを学んでしまう傾向があるんです」
もちろん、ベトナム人にも超エリートもいれば、品行方正な人材もいる。しかし、「日本に来るのは別の属性の人が多い」という声もある。千葉工業大学を卒業したベトナム人のバン・タイさん(仮名、40代)は次のように話す。
「近年日本に来ているのは、学歴もなく、社会人経験もなく、ベトナムの都会でも働けないような農村出身の子が多いです。言ってみれば“不良分子”で、酒やドラッグも平気でやります。当然、日本語だって片言だし、ビジネスマナーなんて分からない。心あたたかい日本人に巡り合えれば別ですが、そうじゃないといじめられる。その結果、失踪して、犯罪に手を染め、堕ちていくのです」
ちなみにベトナムでも優秀な人材は欧米を目指す。出稼ぎ希望者でも、近年は韓国や台湾に行きたがる人材が増えている。
1970年代に来日した白髪のアウ・ダットさん(仮名、70代)は、日頃から熱心にベトナムの家族や親戚と連絡を取っている。訴えているのは、「今の日本に来てはいけない」という内容だ。アルバイトをしなければならない私費留学は、特に危険と背中合わせだと言う。
「私以外にも、70年代にインドシナ難民として日本にやってきたベトナム人がいますが、この中には社会から取り残され、暴力団まがいのグループを日本で組織した連中もいます。このような組織が今も存続し、社会から脱落したベトナム人が“堕ちて”くるのを待っているのです」
アウ・ダットさんは、昨今のベトナム人犯罪の根深さについて「70年代当時、日本政府は積極的に難民の面倒を見たとはいえない状況だった。国にも責任の一端はあります」と断じる。