最期の世話をしてくれる外国人材、一方「やっかみ」も

 23年、猛暑の夏、80代の高齢の男性が神奈川県内の病院に救急搬送され息を引き取った。このときの状況を長女・河野とも子さん(50代)はこう回想する。

「コロナ対応で家族は父に面会できず、最も家族がそばにいてほしかっただろう死に際に、身の回りのお世話をしてくれたのが、中国籍の看護師さんでした」

 日本の高齢世代には、その世代特有のアジア観があるが、望む望まないにかかわらず、不自由になった体を支えてくれて最期を看取ってくれたのは、中国からの人材だった。

 都内在勤の杉田清さん(仮名、50代)も状況は似ている。現在、彼の母親は都内の療養型医療施設に入院しているが、そのフロアでは東南アジアから来た二人の女性が介護職員として働いているという。

「時々その姿を目にするんですが、果たして職場に溶け込めているのか気になります」(杉田さん)

 過去に介護職員として働いた経験を持つ杉田さんは、当時自分が配属された職場をこう説明してくれた。

「日本人同士ですらコミュニケーションがうまくいかないのに、日本語が決して十分とはいえない外国人を受け入れるのは本当に難しい。現場はただでさえイラ立っていて、アジア人材を包容力でフォローする余力などは、私の職場にはほとんどありませんでした」

 とはいえ、日本の産業は、こうした人材の下支えなしには維持できないため、アジア人材は喉から手が出るほど欲しい。

 技能実習制度(4月から新制度)の下では、20年4月から「同一労働・同一賃金」が開始され、技能実習生に支払う報酬は、日本人が従事する場合に支払われる報酬と同等額以上の報酬を支払うことになった。

 しかし、これもまた新たなジレンマを生んでしまった。アジアの人材と介護現場のブリッジとして数々の現場に立ち会ってきた船井貴夫さん(仮名、60代)はこう語る。

「『同一労働・同一賃金』が導入された結果、介護の現場に長いパート・アルバイトのベテラン職員と、入ってきたばかりの10~20代の外国人の賃金は、トータルで同じような金額になりました。そのため、小規模の介護施設を中心に外国人に対する“やっかみ”が強くなっています」