オーラルフレイルに
悩む人の「2つの特徴」
宝田氏によると、オーラルフレイルに悩む人々には“食べ物を噛む歯”と“姿勢”に特徴があるという。
「人間の頭蓋骨は、奥歯で食べ物をすりつぶしてから飲み込むように作られています。しかし、嚥下力が低い高齢者の中には、猫背気味の姿勢で、奥歯で噛むのが難しくなって前歯を使うのが癖になってしまう場合があります。そうなると、柔らかいものばかり食べるようになってしまうのです」
偏食は栄養の偏りにつながるので、注意が必要だ。また、猫背はオーラルフレイルのみならず、運動機能のフレイルとも深く関わっている。
「年齢とともに減少する筋肉のなかでも、首や肩甲骨、背中に位置する“僧帽筋”は、何もしなければ45歳から80歳までのあいだに約40%減少します。僧帽筋が減った高齢者は、背筋を伸ばすのが難しくなり、猫背になってしまうのです。その結果、咀嚼力と嚥下力も下がるという悪循環に陥ります」
口腔機能と運動機能のフレイルは、相関関係にあるのだ。それでも「年齢には抗えない」と諦めないでほしい、と宝田氏は強調する。
「フレイルは、要介護になる前に適切な対策を行えば、健康な機能を取り戻せる状態でもあります。フレイル対策として広く知られているのは『3プラス1』という予防法。1つ目はさまざまな食材を食べて栄養状態を良好に保つこと。2つ目は、体力低下を防ぐための適度な運動です。スクワットや、座りながらかかとを上下させる『かかと落とし』も骨を丈夫にして筋肉量もアップするので、運動機能のキープに役立ちます」
そして3つ目は、積極的な社会参加だ。「他者との交流は脳の刺激になり、認知機能の低下を防ぐ」という。