口や舌を鍛える
「パタカラ体操」

 これら3つに加えた“プラス1”に位置づけられているのが、口や舌を鍛えるオーラルフレイル対策だ。

「代表的なオーラルフレイル予防のひとつが『パタカラ体操』。これは『パ』『タ』『カ』『ラ』という4文字を発音する、口の体操です。パは唇、タは舌の先を鍛え、カは喉の奥にチカラを入れて嚥下力を高めます。ラは食べ物をまとめる舌の筋肉を使う発音です。パタカラ体操には、口腔機能を維持するために必要な要素がすべて入っているのです」

「パタカラ」と、それぞれの文字をはっきり発音したり、パパパパ、タタタタ、カカカカ……と連続で発音したりするのが、主なトレーニング方法。宝田氏自身も日頃からパタカラ体操を行っているという。

「私は、マスクをしたまま小声で発音しています。帰宅時の仕事場から駅までを『パの時間』、電車の中では『タの時間』とトレーニング時間を決めているので、忘れずに継続できています。口腔機能が向上すれば、さまざまな食材を食べて体に栄養を送り、強い足腰で社会参加もできるはず。毎日続けましょう」

 また、加齢によって衰えがちな、前述の僧帽筋を鍛えると嚥下力アップにつながる、とのこと。

「おすすめは、肩甲骨を動かして僧帽筋に負荷をかけて普段あまり動かしていない筋肉を鍛えるトレーニングです。まず、左右どちらかの腕をまっすぐ前に伸ばし、もう一方の手の親指を脇の下に入れて、残りの指で背中の肩甲骨を抑えます。伸ばした手の中指の先から目を離さず上に上げ、後ろに回す。すると、肩甲骨がしっかり動いているのが確認できます。これを両腕で行います」

 そのほか、イスに座る際は骨盤を立てて首と頭を後ろに引き、骨盤を立てる。その際、両足は膝よりもイスの座席側に引いて座ると猫背防止になる。どれも、簡単だからこそ継続しやすい対策だ。

 そして宝田氏は、働き盛りの50代からオーラルフレイル対策を含めたフレイル対策に取り組んでほしい、とアドバイスする。

「50代は体力や気力の衰えを感じはじめる時期です。中高年代から肩甲骨回しやパタカラ体操を取り入れると、習慣化しやすくなります。また、虫歯や歯周病のリスクを下げるために、丁寧な歯磨きや定期的な歯科検診も忘れずに。入れ歯を使用しており、取れやすさに不安がある方は、入れ歯安定剤を使う方法もあります。安定剤にはクリームタイプなどさまざまなタイプがあります。歯科医師に相談して決めてもらうのが良いでしょう」

 高齢者ではなくても、フレイル対策のスタートに早すぎるということはないようだ。

<識者プロフィール>
宝田恭子氏
宝田歯科医院院長
東京歯科大学卒業後、同大学保存科勤務を経て、三代目宝田歯科医院を継承。日本アンチエイジング歯科学会常任理事・睡眠改善インストラクター、姿勢咬合セミナー講師(アロマ・表情筋部門)を務める。テレビや雑誌等メディアでも活躍し『「顔面地すべり」をくい止める! 宝田式速攻5分元金リフトアップ』(PHP研究所)など著書多数。