しかし現実に、米国が今戦争をするとしたら、台湾に侵攻した中国に対してだけです。「そうなったときに米国が中国に攻められたら日本も参戦する」と、一歩踏み込んだ条約にします。実際に台湾侵攻は宮古島や八重山諸島への中国の攻撃、沖縄の米軍基地への攻撃が確実に予想され、日本も戦わざるをえないのですから、もうハッキリと仮想敵国を決めた条約にすべきなのです。日米がそこまで強固な同盟になれば、逆に中国はそう簡単には手を出せません。
沖縄返還のキーパーソンに学ぶ
不利を有利にする「対等外交術」
最後に残るのが沖縄問題です。トランプ氏は政治家ではなく商人だとよく言われます。ならばトランプに対しては、戦後の米国に対する沖縄と横須賀の金銭的貢献を計算し、その数字を示すべきです。
ベトナム戦争も朝鮮戦争でも、沖縄の基地が爆撃機の基地に使用されました。米空母が西太平洋で完全に修理可能な基地は横須賀だけです。北爆、朝鮮戦争、湾岸戦争、イラク戦争など、米国の戦争に両基地がなければ、グアムかハワイしか使用できず、爆撃機は故障や戦闘による破損で途中墜落して、損害は倍加し、死傷者は倍増したはずです。
いかに日本が米国にとって必要な国であり、必要な基地であるかを認識させる。そのためには、沖縄では独立運動や中国に帰属したいという民間の運動を裏で煽動するなどして、米国にプレッシャーをかけます。
前述した末次一郎氏はまさに、こんな手を使いました。彼は陸軍中野学校出身。戦後、在留邦人の日本への引き揚げや、BC級戦犯の早期解放運動で成果をあげ、保守派政治家やライシャワーなど米国の知日派、米軍との人脈を築きました。沖縄返還運動で沖縄大衆党など野党との信頼関係もあります。
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世界の要人や学者との人脈を築き、何度も米国の著名人を招待して沖縄問題のシンポジウムを開き、米国全体に日本には沖縄返還への強い意志があることを認識させるとともに、日本での沖縄返還デモの強烈さを見せて、知日派の米国人を味方につけました。
民間、野党、米官僚・政治家・軍人の友人を使い、彼らと親しくなった上で、返還には強気の姿勢で望んだのです。「もしトラ」の場面では、安倍流の「ただ言うことを聞くだけ」の作戦は通用しません。トランプ氏に対しては、米国なしでも生きていく気概を見せた上で、対等の立場になるための交渉をする。これが、「もしトラ」の対応策です。