クレーム対応で「上の人を出せ!」と言われたとき、「感じのいい人」はとっさに何と言い返すでしょうか。
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「ブーメラン話法」について紹介しましょう。
「説得の技法」とは?
「説得するときの伝え方が知りたい」
これは、コミュニケーション研修の事前アンケートで多く出てくる悩みです。
とくに、「営業」など顧客対応をする方々から、強く要望されます。
おすすめは、まずは説得するに足る十分な根拠を用意すること。
そして、「ブーメラン話法」を使うことです。
ポジティブに返す方法
ブーメラン話法とは、「相手のネガティブな言葉を、ポジティブに返すトークスキルのこと」で、営業の方には、おなじみの応酬話法のひとつです。
たとえば、
「まだ、先のことなので、またご連絡します。」
というお客様には、
「ゆとりをもってお問い合わせいただけてよかったです。
実は今でしたらまだ、人気のシルバーを含んだ全色、在庫がそろっています。お好きな色を選んでいただけます。」
こうすると、「先のこと」だからこその、メリットを伝えられるので、ただの引き留めに聞こえなくなります。
「上を出せ!」と言われたら?
ブーメラン話法は、営業シーンだけでなく、私がかつて最前線にいた、「クレーム対応」でも使えます。
当時、すでにチームの責任者だったのですが、最初から「あなたではなく、もっと上の人に代わってください」と言われることがありました。
そんなときには、
「かしこまりました。では上司にかわるためにも、まずは、詳しいお話を私にお聞かせいただけませんでしょうか?」
と答えると、ほとんどのお客様が、事情を話してくださいました。
最大限丁寧に傾聴するうち、上司対応の必要がなくなっていました。
そもそも、「上司にかわってほしい」は表面的で、「上司に伝えたいほど不快な思いを聞き届けてほしい」が本質的な要望なはずです。
その要望をポジティブな切り替えしで、かなえられたのかと推測します。
やみくもにブーメラン話法を使うと、「その場しのぎ」に伝わります。
くれぐれも説得するときは「十分な根拠」とのセットで、覚えておいてくださいね。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。