泰然自若と構える
「騒ぐほどのことでもない」派

「騒ぐほどのことでもない派」のAさん(40代男性)は、いくつかの知識に基づいて大局を見ている。

「目下、住宅ローンが上がるのではないかと注目されているが、大幅に上がることはないはず。上がりすぎて住宅ローンという商品が消費者から見向きもされなくなっては元も子もないので、銀行は金利の引き上げに慎重だろうし、もし上げるにしても融資関連の手数料を引き下げて全体でできるだけトントンに近づけるよう努力するはず。それに、変動金利が固定金利の水準に急に追いつくこともないだろう。

 また、住宅ローンには『5年ルール』と『125%ルール』があるので、『住宅ローンが変化し、それにつれて生活が急変する』ケースを心配する必要はそれほどない。加えて、マイナス金利解除といえども日銀は緩和策路線を続けるとのことなので、経済情勢も大きくは変わらないだろう。

 以上をもって、今回のことは騒ぐに当たらない」(Aさん)

 一方、「騒ぐほどのことでもない派」のBさん(50代男性)はまったく別の考えからその派となっている。

「難しいことはよくわからないが、日銀が何か大きな決定をして、世間が騒いで、結局景気はよくならなくて……という展開を長年にわたって繰り返し見てきた。『偉い人たちも一生懸命やっているんだろうな』と思うから批判する気にはならないが、今回もどうせ例によって効果は上がらないだろうとしか思えないので、特に盛り上がらない」(Bさん)

 Aさんの観測の切り口は、実は「マイナス金利解除をポジティブに評価する人」のそれによく似ている。ポジティブ評価勢は、「住宅ローンは上がり過ぎないだろう」「経済も混乱するほどは変わらないだろう」という見通しを持つことで、「ネガティブなことは起こらないので、マイナス金利解除は全体的にポジティブ」と好感していると言える。

 ただ、Aさんは同じ材料を見てポジティブ評価に行くのではなく、「騒ぐほどでない」という意見に至った。これはご本人の性格も大いに関係していそうである。また、当該ニュースによって加熱ムードの世論に一旦落ち着いてほしい……といった気持ちもあるのかもしれない。

 一方Bさんの観測の切り口は、ネガティブ評価勢が取りうるスタンスである。「日銀のやることはどうせハズレ。だからマイナス金利解除を評価しない」となるのが大半だが、Bさんのような、政府や日銀などの公的機関の労をねぎらいたい優しい人は、ネガティブ評価に向かわず、かといってポジティブにもなれないので、結果的に中立派である「騒ぐほどでない」勢を選択することになるのであろう。