昭和「先生に殴られて育つ」→令和「“桃鉄”で楽しく勉強」、子どもにやさしい社会はどこからが甘やかしか?いまや子どもの「雑な指導」は社会的に許されない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

時代の変化とともに大きく変わったもののひとつに教育がある。子どもといえば厳しくしつけてなんぼ、いざとなれば殴っても構わなかった昭和の教育は、現代では不適切にもほどがある。一方、このような育てられ方をした上の世代は、下の世代とどのようにコミュニケーションを取れば良いのか戸惑いもあるのではないか。子どもに「やさしい」と「甘やかし」の境界を考える。(フリーライター 武藤弘樹)

年々ピークを更新
子どもに雑な社会から「やさしい」社会へ

 近年は実に子どもに「やさしい」社会である。昔はもっと子どもが雑に扱われていたものだが、子どもへの扱いは時代を経て丁寧になってきた。

 筆者(1980年生まれ)の親世代は、先生にバンバン殴られ吹っ飛びながら育ったと聞かされているが、筆者の世代では教師の暴力は周りにはたまにあったものの、よほど減っていた。しかし雑さはまだ色濃くあって、たとえば小学生の頃通っていた合気道の道場で怪我をした際には、先生から問答無用で傷口にセロハンテープを貼られていたことなどを思い出す(あの道場が特別雑だっただけだろうか)。

 今は少子高齢化も手伝ってか、子どもはとにかく大事大事に考えられていて、その厚遇ぶりは年々ピークを更新している具合である。

 かくいう筆者も子を育てる親として、やけに子どもに甘い自分を自覚しながら日々を過ごしている。「子どもにやさしい」と「子どもを甘やかす」は違うはずなのでその線引きには注意深くありたいと常に身構えているものの、はたして自分の尺度が適切なのかはわからない。

 そんな筆者の感情はさておき、時代の変化を感じさせる最近のニュースは次のようなものだ。

 山口県がラーケーションという制度を導入することを発表した。「子どもが保護者の休暇に合わせて平日に年3日ほど学校を休める。欠席扱いにはならない」というもので、子どもにとっての有給休暇のようなものである。対象は小・中・高の学校と特別支援学校で、「ラーニング」と「バケーション」を組み合わせた造語であるラーケーションなる制度を、最近は全国の自治体がポツポツと導入して始めているところである。