多く見られるのは、酒の席の方が会話は弾みやすいとか、仲良くなるきっかけとして酒は一つの手段である、といったような意見である。
これはおそらく、成人の多くが共感するであろう意見で、恋愛関係に限らずその他の人間関係でも、酒の席で距離がグッと縮まることは実際に多い。適量の酒は人をリラックスさせたり、陽気にさせたりするものだし、酒のある席は長く話し込むのにも向いている。
酒の席は楽しい
でも酒に弱い日本人
ただし、重要なのは「適量」という点である。これを見誤ると、酩酊して意識をなくしたり、あらぬことを口走ってしまったり、果ては暴力沙汰になったり……と、楽しいどころではなくなる。
一説によれば、日本人はアルコールに弱い人が多いと言われており、これはアセトアルデヒドを分解する酵素である ALDH2が欠損している人の割合が多いからなのだそうだ
【参考】アサヒホールディングス「日本人はお酒に弱い人種」
https://www.asahibeer.co.jp/csr/tekisei/health/mechanism.html
日本の電車や路上では、しばしば酔い潰れて寝ている人がいる。欧米人から見ると、酔い潰れても襲われない治安の良さという意味でも、人前で正体をなくすほど酔っ払うなんて信じられない……という意味でも驚く光景らしいが、そもそも日本人は酒に弱い人が多いのだ。
ALDH2の欠損率が44%と半数に近い割合であるのだから、体質的に酒が飲めない人も多い。これは近年になって「アルハラ」という言葉をよく耳にするようになったことや、ノンアルコール飲料市場の好調が意味するものと無関係とは言えないだろう。一昔前までは仕事の付き合いの席で1杯目から「ビールは飲めません」とは言えない風潮があったが、今考えればおそらく少なからぬ人が無理をしていたのだ。
もちろん、「酒が弱い」は「酒が好きではない」あるいは「酒の席が苦手」とイコールではない。実際は酒に弱い酒好きはいくらでもいるし、また下戸でも「宴席は好き」という人もいる。
ここで改めて考えてみたいのは、それでは本来酒に弱い日本人は、現代において酒の席のコミュニケーションに何を求めているのかである。