このように、不快感から逃れる行動は自動化されやすく、無意識に反復されます。汚れた部屋を見てうんざりするのが嫌な人は、こまめに掃除をするでしょうし、定期的に掃除していれば、まとめて掃除する大変さを経験せずにすみます。

 いったん習慣になってしまうと、いちいち考えずに手を動かしていることが多いものです。

 居住空間を清潔にするための掃除、健康な心身を維持するための運動や食事、こういったよい状態を維持するためのメンテナンスは永遠に続きます。

 疲れているのに寝る時間を惜しんで洗濯したり、おいしいものを我慢して体によいとされるものを食べたり。この強力なモチベーションはどこから来ているのでしょうか。

 その答えを実験で実証したのがシドマンです。心理学者であるシドマンはラットや犬に定期的に電気ショックを与え、回避行動を観察しました。その結果、電気ショックを受けるまでの時間と回避行動をとることで電気ショックを受けずにすむ時間のバランスがちょうどいい塩梅だったとき、その動物は電気ショックがなくなっても回避し続けたのです。

 これを発見者の名前をとって、「シドマン型回避」と呼びます。

 痛み止めの常用やオピオイド(麻薬性鎮痛薬)依存も、このシドマン型回避で説明できます。

 また回避行動を習慣にすることで、回避対象が消失していることに気づかないまま、回避し続けることもあります。これはまだ経験していないことを避け続ける強迫症の症状とも共通しています。

自分で自分を騙す
確証バイアス

 不安に対処するとよけいに不安が強まり、不安に対処することは不快感を回避することと同じであるというお話をしてきました。私たちがよかれと思ってしている行動が裏目に出ることは多々あります。

 不安になった現代人が最初に頼るのはネット検索です。家にいながら、誰にも知られずに情報を得て安心しようとします。

 なおかつ、ネット検索では「確証バイアス」がかかりやすくなります。確証バイアスとは、自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまい、それ以外の情報を無視したり検証しようとしなかったりする傾向のことです。