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実は代替交通の方が便利になる?
感謝もされないJR西日本の徒労感
国土交通省は、鉄道の存続・廃止にこだわらない協議を再構築協議会で進めようとしている。赤字を出すローカル線は、運転本数や設備面などで公共交通としての機能が落ちている。まず、鉄道の必要性が検証された上で、路線バスやスクールバス、タクシーなども巻き込んで地域交通全体を再構築し、鉄道の利便性を落とさずに転換後の交通に引き継いでいくのが狙いだ。
こうした全体像を描くことで、その場しのぎの補助でなく、地域交通が本当に長期存続するための実効性が伴う支援を行うことができる。実際、ローカル線の現場では、格安な予約制タクシーの運行(青森県・津軽線)や、高速バスとの共通乗車(徳島県・牟岐線など)など、鉄道より利便性が向上する施策が行われている。
芸備線は、再構築協議会で鉄道の実態が議論されると、代替交通の方が便利な実態が明らかになりそうだ。実は、今回の議論の対象区間(備中神代駅~備後庄原駅間)は、鉄道としての機能低下が著しく、存在意義が薄い。
まず、乗客が多い備後西城駅~備後庄原駅でも、通学時間帯にバス1台で事足りる程度の利用しかない。主要な総合病院、高校、商業施設の集積地は駅から遠く離れており、地元の備北交通と西城交通の路線バスがこれらの目的地をカバーしている。通院時間のバスはそれなりに乗客がいるのに、列車の乗客がいないのは、街の機能が駅から離れているからだ。
かつ、東城駅~備後庄原駅間は、高速道路を経由する乗り合いバスより大幅に遠回りで、所要時間はバスの倍かかる(鉄道は線路状態が悪く、一部区間の最高速度が15km)。役に立たない赤字路線を運行し続け、感謝もされないJR西日本の徒労感は、年間7億円の赤字以上に計り知れないものがあるだろう。こういった現状は、再構築協議会の公開資料にもぎっしり記載されているので、興味がある人は読んでみるといいだろう。
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