今後の社会保障制度改革の本丸は医療・介護だ。医療・介護給付費の伸びは、(1)人口構成の変化や、(2)診療報酬・介護報酬などの単価の伸びのほか、(3)その他要因(医療の高度化等)などの影響を受ける。ベンチマークになるのは、現状投影シナリオのうち、(3)の医療費などの伸びで、これまでの実績を考慮した1%と考えるのが比較的妥当といえるだろう。
このシナリオでは、19年度に8.2%であった医療・介護給付費(対GDP比)は、40年度に10.2%、60年度に13.3%に上昇する試算結果になっている。
また、長期試算では医療・介護の社会保険料負担や公費負担の推計も示している。同シナリオでは、19年度に4.8%であった医療・介護の社会保険料負担(対GDP比)は、40年度に5.7%、60年度に7.2%に上昇する。この試算結果の通り、60年度の医療・介護の社会保険料負担(対GDP比)が19年度の1.38倍となる場合、19~60年度にかけて、医療・介護の社会保険料率が38%増加することを意味する。
23年11月の財政審の建議でも「報酬改定や医療・介護の制度改革に着実に取り組み、全体として、雇用者報酬の伸びの範囲に医療・介護の給付の伸びを収めていく必要がある」と記載され、「こども未来戦略」脚注の保険料率抑制の閣議決定もある。政府は、医療・介護給付費の伸びを制御する「医療版マクロ経済スライド」など、具体的な制度導入を検討すべきだ。
(法政大学 教授 小黒一正)