さらに、海外の事例ではあるが、生成AIを利用して券面上の本人写真を著名人などに偽造している例も確認されている。

警察庁「本人確認書類の偽変造等の実態」警察庁「本人確認書類の偽変造等の実態」

SIMスワップ事件の
問題点とは

 警察庁の「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、このSIMスワップは2022年がピークで、最近では被害が発生していなかった。

 というのも、総務省と連携し、携帯電話事業者に対して、携帯電話機販売店における本人確認の強化を要請、昨年2月までに、大手携帯電話事業者において同要請への対応を完了したためであると、同資料は説明する。

恐怖のスマホ乗っ取り「SIMハイジャック」の3つの兆候とは?警察庁「令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
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 しかし、松田議員の件では、店頭における本人確認が甘く、被害は発生してしまったようだ。

 松田議員らが被害に遭った事件の問題点は、手続き上における本人確認の甘さであろう。

 実際に、筆者が複数の携帯電話ショップに問い合わせたところ、マイナンバーカードを提示された場合の本人確認は券面のみの目視確認にとどまっており、その真贋(しんがん)を確認する方法は担当者の“感覚“に依存しているという。

 現状、総務省は、携帯電話利用不正防止法で要求する契約時の本人確認手法について、以下の通り示している。

総務省・警察庁「携帯電話不正利用防止法」総務省・警察庁「携帯電話不正利用防止法」
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 上図の左部分「第三者が入手できない顔写真付きの公的証明書の原本の提示」には、運転免許証やマイナンバーカードが含まれ、これらを提示することで、身分確認は終了となるが、前述のSIMスワップ事件では、この部分で脆弱(ぜいじゃく)性を突かれている。