血管の炎症を抑えて
動脈硬化を予防する油は?

メソッド1:「EPA」と「オメガ3系油」で炎症の火消しを

「まず、今日から実践してほしいのは、EPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含む青魚を頻繁に食べることです。EPAは、食事から取る必要がある必須脂肪酸で、血管内皮細胞の炎症を抑え、血流を良くする働きがあります。スタチン製剤(脂質異常症の治療薬)で治療中の脂質異常症の患者にEPA製剤を追加することで、脳血管疾患のリスクを50~60%、心筋梗塞のリスクを約20%低下させるという報告もあるくらいです」

 EPAが豊富に含まれるのは、サバ、アジ、イワシといった青魚やサケなどだ。新鮮な刺し身で食べるのが一番だが、味付けをしていない水煮缶も手軽にEPAが取れるのでお薦めだという。

 魚の油のほか、アマニ油、エゴマ油などに含まれる「オメガ3系脂肪酸」は、体内でEPAに変換され、血管の炎症を抑えるとともに動脈硬化を予防する。

 一方、日常的によく使われるコーン油、大豆油、紅花油、ひまわり油などに多く含まれる「オメガ6系脂肪酸」は、体内でアラキドン酸に変換される。アラキドン酸は牛肉、豚肉、鶏肉の脂身やラーメンのスープに浮かぶ白い塊にも含まれる成分で、過剰に摂取すると動脈硬化が促進される。

「もちろん肉や植物油を取ってはいけないということではなく、バランスが大事。どちらも食事から取る必要がある必須脂肪酸ですが、ほとんどの日本人はオメガ6系脂肪酸の取り過ぎです。魚を食べオメガ3系脂肪酸を増やして、オメガ6系との比を1対1に近づけるのがポイントです。また、調理用には、アラキドン酸が少なめで悪玉コレステロールを減らすオメガ9系のオリーブ油がお薦めです」

メソッド2:「ベジファースト」と「ゆる糖質オフ」で血糖スパイクを回避

 血管の老化を防ぐには、血糖値が急上昇する「血糖スパイク」を避けることも重要だ。

「血糖値の急上昇が繰り返されると、血管の壁のタンパク質に血液中のブドウ糖が結び付いてAGE(終末糖化産物)が産生され、それが血管の中の細胞を傷つけ老化を促進します」

 国内外の研究で、血糖値の急上昇を防ぐために有効とされるのが、食事のとき野菜から食べ、米飯やパンなどの炭水化物は後回しにするベジファースト(ベジタブルファースト)だ。食べる順番に気を付け、食物繊維が豊富に含まれる野菜を先に食べるだけで、腸から食欲を抑える「GLP-1」が分泌され血糖値の上昇が緩やかになる。

 GLP-1は、通称「やせホルモン」と呼ばれ、糖尿病や肥満症の治療薬としても使われている成分だ。野菜を先に食べれば、炭水化物(糖質)の取り過ぎも抑えられる。