chocoZAPはコア顧客だけを
重視してはいけない

 会員のニーズには一定のボリュームゾーンがあるとは思います。

「運動不足が気になっていて、でもターミナル駅のジムに行ってまでトレーニングする時間がもったいない」とか「月1万円の会費はちょっと。月2980円だからやってみたい」といったニーズがあるからこそ、chocoZAPはここまで急速に会員数が拡大できたのでしょう。

 chocoZAPはサブスクですからいきなりステーキとは違い、こういったコアな顧客のニーズに応えても売上は増えません。それよりもライトユーザーの顧客への定着策が重要です。

 しかし112万人と日本一の会員数になると、そのニーズが実は多様化していっています。

「週3回は通って20kmぐらいは走る」という人もいれば、「医者に言われて仕方なく始めたけど月2~3回がせいぜいだな」という人もいるでしょう。「彼女と別れたから通う理由がなくなった」とか「足が遠のいたらそれが結構楽で、今は行かなくなった」とか、退会直前の個別で多様な事情を持つ幽霊会員候補がだんだんと増えていくのです。

 ではそういった様々な事情を抱えた退会候補者を定着させるためにはどのような経営を目指すのがいいのでしょうか?

 その打ち手が実はすでに現在のchocoZAPがやっている「サービスの多様化」です。

 chocoZAPではトレーニングマシン以外にピラティス、ゴルフなどのスポーツメニュー、そしてセルフ脱毛やマッサージチェア、セルフネイルといった運動とは関係ないサービスを提供しています。

 これが実は多様な会員を定着させる施策としては有効です。

 似たような着眼点のサブスクサービスは実は結構あります。映画やドラマのストリーミングサービスの中にはコミックスを読み放題にしているサービスがあります。お目当てのコンテンツを見終わったら退会するかもしれない会員がスマホでコミックスを読み続けてくれれば退会率は下がります。

 私の場合、アマゾンプライムは実は送料無料はあまり活用していません。普段ECで買う場合、たいがい送料無料のものを買うことが多いと思っています。でも先日、年会費5900円を更新した理由は動画配信が見られなくなるのはちょっと嫌だなと思ったからです。

 このGWも『ゴジラ-1.0』や『井上尚弥vsネリ』を鑑賞してアマゾンプライムに関してはほぼほぼ年会費分は元をとったと思っています。

 会員数が112万人ともなると退会の理由もさまざまで、だからこそコアサービスである「トレーニング」の内容を充実させるよりも周辺サービスを充実させたほうが退会理由が減るレベルになってきているわけです。