「会員の定着化」が
 chocoZAPの最大の経営課題

 ではコンビニジムのchocoZAPはどうかというと、おそらくコンビニのように国民全体が利用者ということにはならないでしょう。

 ここは実は、この記事の終盤で議論がひっくり返る論点ではあるのですが、いったん、ジムの利用という観点では「いつか需要が踊り場にくるリスクがある」として検討を進めたいと思います。

 仮に読者のみなさんがchocoZAPの経営陣だとして、急速に112万人の会員を獲得した状況に直面しているとします。これは競合のジムを追い抜く日本一の会員数です。この状態から考えられる「需要減のリスク」にはどのようなものがあるでしょうか?

 たとえば「始めてみたけれども三日坊主というか数カ月で利用しなくなる」という会員は一定数いそうです。逆に「始めてみたら運動が楽しくなって、これからは指導員のいる本格的なジムでトレーニングしたい」と言って卒業する会員もいるかもしれません。「引っ越して環境が変わったので退会する」という人もいれば「金銭的にペイしないように感じた」という人も出てくるでしょう。

 つまり112万人の会員を獲得したchocoZAPをここから経営する場合には、この会員の定着化が最大の経営課題になります。特に足元の急速な需要増はブームが支えている部分が少なからずありますから、反動リスクには大いに注意すべきです。

 ではchocoZAPはそのために何に気を付けるべきでしょう?ここがいきなりステーキとは違う点です。

 いきなりステーキの場合は、本来、失速しないようにすべきだったことはコアの顧客ニーズを取りこぼさないことです。

 肉が好きで、ステーキが好きな顧客が、原価率が高い(言い換えるとコスパがいい)いきなりステーキにひと月に何回も通って何kgもステーキを食べる。こういったコアの顧客がいきなりステーキの経営を支えています。

 たとえばこういう状態で、原価率を下げ(つまりコスパを悪化させ)たらコア顧客が離れてしまいます。つまり経営にマイナスな環境が起きてもコア顧客のニーズを離れてはいけないのです。

 一方でchocoZAPはどう考えなければいけないのでしょうか。実はコア顧客だけを考えていてはダメなのです。