米景気「強振れ」「弱振れ」「軟着陸」で揺れ動く予測、どれが正解なのかPhoto:PIXTA

今年1~4月を通じて、米景気は依然強く、インフレは高止まり、利下げどころか利上げも排除されないという見方が強まった。しかし5月にわかに、景気指標は予想を下回るものが相次ぎ、年内利下げ予想も1~2回まで戻されている。コロナ禍以降、景況感は数カ月ごとに強弱変転してきた。今回の“減速”という景況感は正しいのか、そのシナリオ分岐は相場にどう影響するのか。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

年初には市場はFRBの年内の
6回の利下げを織り込んでいた

 最近公表の米景気・労働指標は、軒並み市場予想を下回った。株式、債券、為替などの相場は悲喜こもごも揺れ動いている。この米景気減速の確からしさと、市場への影響を考える。

 2024年に入ると4月まで月を追うごとに、米経済データは市場予想以上に強振れた。これではインフレ率も下がるまいとの懸念が強まり、実際、インフレ指標も強含んだ。

 年初には、市場はFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げを年内6回と織り込んでいた。それが、強い指標を確認する度に、4回、3回、2回、1回と減り、4月には0回に至り、利上げすらあり得るという声まで出た。

 債券市場では、昨年9~10月に長期金利を5%超にまで押し上げた投機筋が「夢よ、もう一度」とばかりに動き出した。しかし、4月25日の4.7%台をピークに気勢をそがれていった。次ページ以降、彼らを意気消沈させた経済指標の変遷を順に見ていこう。