例えば、小林さやかちゃんとは高校2年生の夏休みに出会ったんですけど、彼女の「〇が6割、✕が4割」は、小学4年生くらいの内容なんですよ。そこがキーになっていたんだなと。「だったら、そこから戻ってやろうか」と言って、勉強を始めたんです。
高校2年生からすれば、どれだけビリでギャルで「勉強イヤ」ってなっていたとしても、小学4年生のドリルはサクサクできるわけですよ。それこそ、「あいうえお」は書けるわけですよね。
伊藤羊一氏(以下、伊藤):そうですね。
尾原:確かに。
坪田:そこに戻って1年分のドリルをすると、2週間くらいでできるわけですね。しかも、けっこうサクサクできるじゃないですか。
「勉強苦手って言ってたけど、普通の人が1年かけるところを2週間でできたじゃん。すごくね?」って言うと、「確かに!」ってなるわけですよ。
尾原:なるほどね。
坪田:「次、何年生のやつやる?」「5年生かなぁ」、「どれくらいでやる?」「2週間かな」って、鼻を膨らませながらするわけですよね。
伊藤:(笑)。
坪田:ところが、それだけやる気になっていたさやかちゃんが、次の日、新しく渡した小学5年生のドリルを持ってきて。「こんなんやっても意味がないと思う」と言って、めちゃめちゃテンションが下がっていたんですよ。
「昨日あんなにノリノリで、2週間で終わらすって言ってたのに、どうした?」と聞くと、「家でドリルをやってたら、クソ親父が部屋に来た」と。
彼女はお父さんのことを「クソ親父」って呼んでいたんですけど、「クソ親父が部屋に来て、お前、慶應に行くって言って、塾に行ってるらしいな。そんな詐欺師みたいな先生に習ってどうなるんだ」と、言われたらしいんです。
「お前、今何やってるんだ?」と聞かれて彼女が見せたら、高校2年生の娘が小学5年生のドリルを一生懸命やっているわけですよ。
尾原:なるほど。
坪田:それを見たお父さんから、「お前、慶應を目指すんだろ? なんで高2なのに小学5年生のドリルなんかやってるんだ?」って聞かれて、彼女は「私はこれをする前に、小学4年生のドリルを2週間でやった。坪田先生には、普通の子が1年かけてするドリルを2週間で終わらせてすごいって褒められた。だから今は5年生のドリルをやってるんだ」って答えたんです。
するとお父さんが、「普通の人はな、もっと前に終わってんだよ」って言ったらしいんですよ(笑)。それで、本人的には「騙された」となって、やる気がなくなったという話です。
本来は、本人ができているところとできていないところ、ちょっと好奇心を持てるところに合わせてやるべきですよね。それなのに、日本はカリキュラム至上主義なので、「高校2年生の夏休みはこれをやっていないといけない」って、なりがちじゃないですか。
尾原:そうですよね。
坪田:なので坪田塾では、本人の今の学力レベルに合わせて、「〇が6割、✕が4割」のところに戻る。そうすると、嫌でもスルスルとできる。
できすぎず、ちょっと考えるレベルのところに戻る仕組みですね。