目立ったのが、学校行事などのスローガンへの活用です。合唱祭で「最響そして最幸」を掲げた岐阜県の中学校や(2004年2月14日付 岐阜新聞)、部のスローガンを「日本一最幸な野球部」とした長野県の高校の野球部(2017年7月5日付 信濃毎日新聞)などのケースがあります。

 全国高校ラグビー地区予選の戦績を伝える、スポーツ報知の記事では、印象的な使用例が確認できました。頂点を決める「花園」常連校・東海大学付属大阪仰星高等学校にまつわる内容です。

 昨年度は春の選抜、夏の7人制と合わせて全国高校3冠を達成した。当時のレギュラーが3人残り、昨年度と比較して指揮官は「去年は頭のキレがずばぬけていた。今年は明るくて勢いがある」と評する。チームスローガンは昨年度の「一勝懸命」から「一笑懸命」に変更。(筆者註:主将の)山田が「笑顔が絶えない」と言うように「“最幸”の笑顔の輪を広げる」をテーマにしている。
――2016年11月14日付 スポーツ報知

 いずれの事例においても、「最幸」を自称することで、明るさ・勢いといった要素を活動に取り入れよう、との心情が見て取れます。困難に直面しようとも、笑顔で乗り切り、最高のパフォーマンスを発揮する。ある種の願掛けのような趣旨と解釈できそうです。

 2016年10月27日付の新潟日報朝刊に掲載されていた、中学生の投書も心に残りました。部活中のけがが原因で一時車いす生活となったものの、友人の計らいで、楽しみにしていた体育祭のダンスパフォーマンスに出場できた、との内容です。そして「『最悪の体育祭』から『最幸の体育祭』になった」と結んでいます。

 スポーツなどの領域において、苦境を覆す力を得るため、ポジティブな言葉を積極的に口にする習慣はよくみられます。また新潟の中学生のように、自らが良縁や幸運に恵まれたことに、並々ならぬ感慨を抱く人々は少なくありません。