なぜこんなに手厚い資金助成がされるかと言うと、国や自治体が省エネに前向きであるからに尽きる。これが本格化したのは、菅義偉首相が2020年10月26日の所信表明演説において、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言したことによる。カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、脱炭素社会の実現を指す。
住宅・建築業界は日本の二酸化炭素排出量の3分の1を占めており、日本の脱炭素化に大きな影響を与えている。オフィスビルなどの産業界が先立って推進してきたが、これが一般の住宅においても、省エネという名のもとに、推進・義務化が進む段になったのだ。住宅では、主に冷暖房や給湯での省エネが求められるが、これを家の断熱化などによって実現しようというものだ。このため、初期費用のかかるものは補助金や減税でインセンティブをつけている。
しかし、この制度の認知度は低い。リフォームする人が知らないだけでなく、リフォームを施工する人たちも理解し、積極的に営業しているわけではない。先ほどのアンケートでリフォーム会社の探し方は「自分でネット検索」が最も多かったが、補助金申請の理解とノウハウがあるなどの要件を満たさないと相見積もり程度ではうまくいきそうにない。
となると、知っている者勝ちになるので、会員やリフォーム会社に積極的にノウハウ提供を私たちは始めている。補助金の組み合わせや減税の申請方法など、そのノウハウは複雑なものの、一度理解すれば腹の痛まない値引き提案のようになるので、営業効果は抜群になる。
持病の改善率が違う
健康状態を大きく左右する断熱性
そうした断熱された家は、健康状態を大きく左右することがわかっている。近畿大学の岩前篤教授が長年調査した結果によると、引っ越し先の断熱性能のレベルで持病の改善率が大きく違うことがわかっている。
たとえば健康状態の改善であれば、断熱等級5以上の家に引っ越すと改善した率が83%にのぼる。この他、アレルギー性鼻炎、手足の冷え、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などが改善するのだ。これは室内の断熱だけでなく、空気環境(温度・湿度・汚れ)を良好にすることの効果でもある。