東京IT探偵が
ChatGPTを「あまり使わない」ワケ

 筆者は「本業」の仕事柄、日頃からさまざまなIT系ニュースメディアに目を通している。そこで新たなAIが紹介されていると、「自分なら探偵業にこう生かす」と頭の体操をするクセもつけている。

 だからこそ、依頼があったときに「ボーカルリムーバーを使おう」などと瞬時にひらめくのだ。各ツールの仕組みを把握している分、「今回は既存のツールでは厳しいから自分で構築しよう」といった状況判断もすぐにできる。

 一方で、昨今話題となっている「ChatGPT」などの生成AIは、探偵業ではあまり使っていない。ビジネスの世界では、ChatGPTを使って文書作成を効率化している例があるようだが、筆者が経営する探偵事務所では、依頼者に提出する「調査報告書」は必ず人間が作成している。

 この書類は、調査対象者が「いつ・どこで・何をしていたか」を、写真と文章を交えながら説明するものだ。「事実」を正確に伝えることが最も重要であるため、学習データに基づいた「推論」によって文章を生成するAIではなく、現場を目撃した探偵が書いた方が圧倒的に分かりやすいからだ。

 このように、新しいITツールが全て役立つとは限らないのも探偵業の面白いところだ。調査で成果を挙げたものがあれば、今後も読者諸兄に紹介していきたい。