あるときはモニターの画面と向き合い、ソフトウェア開発やITインフラ構築を手掛ける。あるときは夜の闇に紛れ、調査対象者を尾行する。都内某所には、そんな「2つの顔」を持つ男が経営する探偵事務所「東京IT探偵」が存在する。今回は東京IT探偵の“中の人”が素行調査で活用した、「社員の不正が即バレするAI」について解説する。(東京IT探偵、構成/ダイヤモンド社 濵口翔太郎)
東京IT探偵のもとを
怒り心頭の経営者が訪れた
表の顔はITエンジニア、裏の顔は探偵――。それが筆者の働き方だ。
筆者はフリーランスのITエンジニアとして働きつつ、副業として探偵事務所の代表を務めている。事務所の名は「東京IT探偵」。その名のとおり、本業で培ったIT関連の知見を活用して調査を遂行するのが特徴だ。
事務所設立は2017年。現在は浮気・不倫・素行調査をはじめ、人探しや行方調査、盗聴器の探索などを幅広く手掛けている。今回は、ITエンジニアと探偵という「二つの顔」を持つ筆者だからこそ解決できた案件を紹介していきたい。
ただし守秘義務があるので、依頼者が特定されないよう、エピソードの一部に脚色を加えていることをご了承いただきたい。
「ウチの会社の商品を、こっそり盗んでいる社員がいるようだ。そいつが具体的に何をやっているかを突き止めたい」。
小さな会社を経営する50代男性(以下、A氏)が、血相を変えて事務所にやってきた。A氏は、とある商材の「問屋」を経営しているのだが、某社員が管理しているはずの在庫が「いつの間にか消えている」ケースがあったそうだ。
しかし、監視カメラの映像を調べても、商品を盗んでいる決定的場面は写っていなかった。被害の規模が大きいわけでもなく、「誤って紛失しました」などと言われてしまえば、それ以上の追及は難しくなる。確たる証拠がなければ警察も動いてくれないと考え、A氏は自力で尻尾を掴もうと思い立った。