大統領が長ネギの値段の相場を
知らなかったために選挙で苦戦
4月に行われた国会議員総選挙でも、韓国の物価高騰を象徴するような話題があった。選挙戦前の3月、大統領の尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏がソウルにある農協系のスーパーを視察した際、そこで売られていた長ネギの価格が1束875ウォン(約99円)であることについて「適正な価格だ」と述べたのだ。長ネギは、店舗などによって価格のバラツキが多少あるものの、だいたい1束3000ウォン(約341円)程度が相場なので、尹氏が見た長ネギはかなりの特売品だったのである。これが波紋を呼び、さまざまな反応が沸き起こって、「大統領は物価を知らないのか」という批判の声が上がって、選挙戦で与党を攻撃するネタに使われた。
結局この選挙で与党「国民の力」は大敗を喫し、尹政権にとっては残りの政権運営は相当厳しいものになってしまった。もちろんそれだけが原因ではないが、国民から見れば、尹氏の認識のズレがイメージダウンを招いたのは間違いない。尹氏の発言を鬼の首を取ったかのように責め立てていた野党は見苦しいし、それに流されてしまった国民も残念ではあるが、それだけ食を中心とした物価の高騰は生活に影響を与えているといえる。
話を物価に戻そう。韓国では長ネギ以外の野菜や果物の価格が高騰しており、ホウレンソウ1束3000ウォン(約341円)、ブロッコリー1株500ウォン(約569円)、リンゴ1つ6000ウォン(約682円)、ナシ1つ7000ウォン(約796円)といった具合で、もはや野菜や果物は「ぜいたく品」なのだ。
そんな状況なので、日本に帰るたびに「日本も物価が高騰しているとはいうが、それでも安い。韓国の比ではない」と身にしみて感じる。韓国では旧盆、旧正月のための料理やキムチ漬けのキムジャンに何種類もの野菜や果物を材料として用いる。韓国人にとって、こうした伝統的な行事や日常の食生活に欠かせない野菜と果物が高騰しているのは、非常に切実な問題だ。