錦織圭、マリア・シャラポワ、大坂なおみ、ネリー・コルダ……指導した数々の選手を世界トップレベルに導いてきたトレーナー界のカリスマ、中村豊。彼に指導を受けた選手たちは、アスリートとして大幅なステップアップを遂げています。
中村はトレーニングによってのみ身体能力が向上するわけではなく、必要なのは「トレーニング」「リカバリー」「栄養」の3つのメソッドだと語ります。そして、この3つを適切に行えば、一般の人でも身心が健全に整い、若さを持続できると主張するのです。その実践方法を分かりやすく具体的にまとめたのが、中村の初著書『世界最高のフィジカル・マネジメント』です。本連載では同書から「誰もが自宅で簡単にできるフィジカル・トレーニング」を紹介していきます。
スクワットは最も愛好者が多いトレーニングだと思います。下半身だけでなく上半身にも効き目がある非常に有効なエキササイズです。ただし、やり方によってその効果はまったく異なったものになります。正しいフォームで行えば最強の筋トレになりますが、一つ間違えると怪我にまでつながる危険性があるのです。スクワットを通して、正しいフォームでトレーニングを行う重要さを是非、実感していただきたいと思います。

正しいフォームのスクワットこそ最強のエクササイズPhoto: Adobe Stock

スクワットは回数をこなすのでなく 
各筋肉の動きに意識を集中する

 スクワットはトレーニング愛好家に最も人気があるエキササイズといえるでしょう。簡単に行える反面、本当に正しいフォームを理解して行っている方は案外少ないように思います。そして最も注意しなければならないのは、スクワットは回数をこなすことを優先しがちになる点です。

 日課としてスクワットを行う場合、日々の目標として30回とか50回とか回数を設定している人が多いと思います。ですが、回数を目標にしてしまうと、それをこなすことに意識がいって、どうしてもフォームがおろそかになりがちです。また回数が進み疲れが出てくると自然にフォームも乱れてきます。

 回数を増やすよりも、身体のどの筋肉に効いているかに意識を集中して、正しいフォームで行うほうが何倍もトレーニング効果が高いのです。

 スクワットは主に下半身の筋肉である太もも前の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、お尻の大臀筋(だいでんきん)、太もも裏のハムストリングスを鍛える運動ですが、姿勢をしっかり保てば、腹筋や背筋のトレーニングとしても有効です。スクワットを行っている最中にはこれらの筋肉に意識を集中してみましょう。

真に正しいスクワットのフォームとは?

 筋トレの目的は、筋肉量を増やすことにあります。そのためには、負荷をかけていくことも大切です。なぜなら同じ強度のトレーニングを行っていると筋肉が慣れてしまい、成長が止まってしまうからです。

 スクワットであれば、正しいフォームを確認しながら、徐々に回数を増やしていく方法もあります。ただし回数を増やすとそれだけ時間もかかるので、忙しい方にはダンベルなどを持って重量で負荷をかけていく方法もオススメです。

 まず【写真1】のように、つま先は左右10~20度ほど外に向けて真っ直ぐ立ちます。かかとはしっかり床につけてください。かかとが浮くと、負荷が弱くなってしまいます。ダンベルを使う場合は、両手で持ち、胸の前で固定します。

正しいフォームのスクワットは最強のトレーニング【写真1】つま先は左右10~20度ほど外に向けて真っ直ぐ立ちます

 次いで【写真2】のように腰を落とし、大腿四頭筋(太もも)が床に対して平行になるくらいまで深く曲げます。注意点は膝関節がつま先の位置よりも前に出ないこと、そして膝関節とつま先の方向が同じであることです。特に膝が内側に入ってしまうと、膝を痛める原因になるので気をつけましょう。

正しいスクワットのフォーム【写真2】膝関節はつま先の位置よりも前に出さない。膝関節とつま先は同じ方向

 上半身を真っ直ぐ保つことで、腹筋と背筋も鍛えられます。ダンベルを使う人は、その重さに負けないイメージで行ってください。

(本原稿は中村豊『世界最高のフィジカル・マネジメント』から一部を抜粋・編集して掲載しています)