錦織圭、マリア・シャラポワ、大坂なおみ、ネリー・コルダ……指導した数々の選手を世界トップレベルに導いてきたトレーナー界のカリスマ、中村豊。彼に指導を受けた選手たちは、アスリートとして大幅なステップアップを遂げています。
中村はトレーニングによってのみ身体能力が向上するわけではなく、必要なのは「トレーニング」「リカバリー」「栄養」の3つのメソッドだと語ります。そして、この3つを適切に行えば、一般の人でも身心が健全に整い、若さを持続できると主張するのです。その実践方法を分かりやすく具体的にまとめたのが、中村の初著書『世界最高のフィジカル・マネジメント』です。本連載では同書から「誰もが自宅で簡単にできるフィジカル・トレーニング」を紹介していきます。
今回は、膝痛に効くストレッチを紹介します。膝痛の主な原因は筋肉が硬くなって膝の動きが悪くなることにあります。筋肉が硬直して膝が伸びなくなり、不自然な姿勢を続けることによって膝関節に負担が生じ痛みが現れます。そして痛みがあると足を使わなくなり、さらに筋肉が硬直するという悪循環にはまってしまいます。ですから膝に痛みが出たら、まず足の筋肉をほぐす必要があるのです。
膝痛の主な原因は、筋肉の硬直化
膝痛に悩む人は日本では非常に多いようで、その数は3000万人ともいわれています。そのうちの7割くらいの方は有効な治療方法を見いだせず、痛みが慢性化してしまっているという報告もあるようです。
膝の痛みには大きく分けて膝関節そのものに問題がある場合と、膝を動かす筋肉に問題がある場合の2つがあります。
しかし膝関節に問題が生じる場合でも、足の筋肉の硬直化が関節への過度の負担になっていることが多いのです。
ですから、足の筋肉をほぐすストレッチこそが、膝痛を和らげるのに最も有効な方法といえるでしょう。
膝痛を和らげる「たった2つのストレッチ」
ここでは、膝痛の原因になる硬直化した筋肉をほぐす2つのストレッチを紹介します。
ストレッチを行うためには「フォームローラー」を用いるのが有効です。下の写真の腰の下を支えている器具です。安いものであれば1000円程度で購入できるので、ぜひ試していただきたいのですが、とりあえずはバスタオルでも代用できます。バスタオルの長辺を半分に折って、グルグルと巻いて筒状にしてください。ストレッチの途中でほどけないように、紐などで結んでおくと良いでしょう。
では、まずは太ももの外側に位置する腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)という膝を安定させる靭帯をほぐすストレッチを紹介しましょう。
【写真1】を見てください。まず足の付け根から膝関節付近までゆっくりフォームローラーでマッサージしていきます。そのなかで硬い部分を探り、そこを中心に体重を乗せ、圧をかけて前後左右に動かしてほぐしていきます。左右入れ替えて行ってください。
次に股関節の付け根から太ももと膝の内側に付着する内転筋のストレッチを行います。内転筋群には骨盤の安定性を保つ働きがあります。ストレッチで可動域を広げることで体幹が安定し、膝への負担が軽減します。
【写真2】のように、足の付け根から膝の内側までゆっくりフォームローラーでマッサージしていきます。そのなかで硬い部分を探り、そこを中心に体重を乗せ、圧をかけ前後左右に動かしてほぐしていきます。
このストレッチも左右入れ替えて行ってください。
(本原稿は中村豊『世界最高のフィジカル・マネジメント』から一部を抜粋・編集して掲載しています)