2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
あなたが、あなたでいてくれることに「ありがとう」
人間は、努力しなくてもいいのではないか。
存在しているだけで価値があるのではないか。
その人が存在しているだけで、心があたたまって、やさしい気持ちになれるなら、その人は、ものすごく価値があるのではないでしょうか。
私の長女は知的障害を抱えています。この子は、努力もしないし、頑張りもしない。才能もないため「頑張らなければ、人間ではない」という価値観からすると、この子は価値がないことになってしまいます。
ところが、彼女が属しているクラスは、生徒がみんなやさしい。彼女の存在が、クラスの子をやさしくしてしまうようです。
どうしてかというと、この子は、ありとあらゆる場面において、争わないし、競わないし、戦わないからです。それどころか、自分よりも立場の弱い子を見つけては、その子を助けようとします。
この子が、小学校6年生のとき、3学期の通知表に、校長先生が特別に書いてくださったメッセージがあります。こういう内容でした。
「6年生全員の中で、慶子ちゃんほど心を込めて『ありがとう』を言う生徒はいませんでした」
長女が幼いころから、私たち夫婦は「ありがとう」を言い合ってきたものですから、彼女もいつの間にか「ありがとう」を覚えてしまったようです。
彼女は「ありがとう」を言うとき、90度まで体を折ってお辞儀をします。このしぐさがとてもかわいくて、とても美しい。わが家でいちばん美しく「ありがとう」を言える人です。
先日も、こんなことがありました。
駐車場に戻ったとき、私たちがサッサと歩いていると、長女だけがトコトコと料金所まで行って、「ありがとう」と係の人にあいさつをしました。車を停めた私たちは、料金を払うのですが、係の人は、私たちがいない間、車を見てくれていた。ですから、彼女の目には「見てくださって、ありがとう」と映ったのでしょう。
長女を見ていると、この子は、「人間が、生まれながらにして持ち合わせているやさしい心」を呼び起こすために生まれてきたのではないか、と思います。彼女は、ただひたすら、その役割で存在しているかのようです。
この子がしていることは「ありがとう」と言ってニコッとする、ただそれだけです。でも、笑顔を見せることによって、クラスの子どもたちは、みんなやさしい子どもたちになっていった。そして、この子と一緒に過ごしている小林家の人間も、やさしくなりました。
常識からすると、努力をして何かを成し遂げたり、頑張って成績を上げたりすることがよいことのように思われています。もちろん、それも尊い才能ですが、努力や頑張りだけが価値ではないはずです。
その人が存在していること、その人がその人であることが、まわりをものすごくあたたかくし、穏やかにし、笑顔にする、そんな存在の人もいるのです。
すべての人は、「存在するだけ」で価値があると思います。
そこに存在してくださっていることに「ありがとう」なのです。
すごい功績を残さなくてもいい。
そこに、「あなたが、あなたでいてくれるだけでいい」のだと思うのです。