『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行される。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名な「ガンジー」のことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、本書の「はじめに」の一部を特別に公開する。

インドの賢者ガンジーが孫にだけ語った「人生を変えるレッスン」とは?Photo: Adobe Stock

「あなたがこの世で見たいと思う変化に、あなた自身がなりなさい」

 バプジ(「祖父」の意味)と一緒に暮らした二年間は、バプジにとっても私にとっても重要な時期だった。

 バプジが世界を変える活躍をするかたわらで、私は自分を変えようと奮闘していた。しばしば暴走して手に負えなくなる自分の感情をコントロールし、自分の能力を発揮して、世界を新しい目で見る方法を探していた。シンプルで実用的な人生のレッスンをバプジから教わりながら、同時に歴史を目撃していたのだ。

 あの二年間は、「あなたがこの世で見たいと思う変化に、あなた自身がなりなさい」というバプジの有名な言葉を教わる、短期集中コースのようなものだったのだろう。

 現代に生きる私たちにも、その変化が必要だ。暴力と憎悪がすでに危険なほど蔓延していることを考えると、今すぐにでも行動しなければならない。

 人々は変化を切望しているが、どうすればいいのかわからず、途方に暮れている。貧富の格差が広がり、アメリカだけでも一五〇〇万人以上、そして全世界では何億人もの子どもたちが、十分に食べられずにひもじい思いをしている。その一方で、豊かな人たちは、まるで当然の権利のように資源を無駄づかいしている。

 私の祖父は、まさに今のような時代が訪れるのを恐れていた。暗殺されるわずか一週間前、記者から「あなたが亡くなった後に、あなたの思想はどうなると思いますか?」と質問されると、祖父は深い悲しみをたたえてこう答えた。

「人々は生きている私に賛同し、死んだ私を崇拝するが、私の大義を自分の大義にすることはないでしょう」

 私たちは今ここで、ガンジーの大義を再び自らの大義にしなければならない。バプジが授けてくれた日々の教えは、現代でも生かすことができる。むしろ、今ほどバプジの教えが必要な時代はないだろう。

 バプジは、時代を超越した真実と、実用的な教えの両方を活用して、歴史の流れを変えた。そして今度は、現代に生きる私たちがそれを実践するときだ。バプジの教えは、私の人生を変えた。あなたもバプジの教えで、人生の意義を見つけ、より深い心の平穏を手に入れることを願っている。

(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)