子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします。

【静かなリーダーの技術(2)】指示しなくても部下が自主的に動いてくれる「裏技」Photo: Adobe Stock

「ピグマリオン・クエスチョン」という魔法

「指示を出すのが苦手」というのは、多くの内向型リーダーが直面する問題です。

 管理職という立場になった以上、他のチームメンバーを動かし、協力してもらわないことには、成果は出ません。部下に頼み事をしづらく、仕事を自分で背負い込んでしまう人も多いと聞きます。

 ちなみに、あなたがこんな部下を持ったら、どうするでしょうか?

 言われたことしかやらない新人社員。細かいこと全てに指示を出さないと動いてくれません。職場に課題があることも自主的に考えません。

 そんな部下に「自分で考えて動けるようになってほしい」というメッセージを伝えたいとします。

 そのとき、あなたなら、どんな言葉をかけるでしょうか?

 内向型の人ほど、どんな言葉をかけるか困ってしまうかもしれませんが、研究からわかってきた有効な方法は、普段の何気ない会話の中でこんな言葉をかけることでした。

あなたは言われなくてもやる人だと思いますか?

 いきなり言われると驚くかもしれませんが、この言葉を仕事以外の場面で何気なくかけてみるのです。ちなみにあなたが、日常会話の中でさらっとこの質問をされると、どんな感じがするでしょうか?

「はい」「いいえ」どちらで答えてもいいのですが、私たちは2つの選択肢があったとき、よりよい選択肢や、自分がそうなりたいと思う選択肢を選ぼうとする傾向があります。「もちろん、シチュエーションによっては言われなくてもやりますよ」と答えるかもしれません。

 その場合は、「じゃあ、どんなときに言われなくてもやる?」と聞いてみると、脳内に「言われなくてもやっている自分」が自然と想像されます。すると、脳は自分でイメージした通りになろうとするのです。

 実際にショッピングモールでアンケートをお願いする実験でも、「少しお時間よろしいでしょうか?」と声をかけたグループと、「あなたは人に協力的ですか?」と声をかけたグループで、どのくらいアンケートに協力してくれるかというリサーチがあります。

「少しお時間よろしいですか?」と聞いたグループは協力してくれたのが29%でしたが、「あなたは人に協力的ですか?」と問いかけたグループでは、なんと77%の人が協力してくれたそうです。問いかけるだけで、約2.7倍も実際に行動してくれたのです。

 問いかけることで相手がそうなろうとする質問法を、私は「ピグマリオン・クエスチョン」と呼んでいます。

 ピグマリオン効果とは、期待をかけるとその通りになるという心理現象ですが、次の項目で伝えるとおり、期待をかけることは人によっては命令にも感じられる人がいるため、逆効果になる場合もあります。

 そこで効果的なのが、命令ではなく相手に問いかけるこの「ピグマリオン・クエスチョン」です。脳は質問されるのが大好きで、問いかけられると答えようとするため、自然に自分でどうなりたいかを決めてくれるのです。

※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。