認証不正が発生する主な要因は?
マツダとトヨタの資料で判明

 なぜ、認証不正が起きたのだろう。問題が発覚した企業の開示内容を確認すると、マツダの公表内容が分かりやすい。同社は「不正の原因」を3つ指摘した。

写真:マツダPhoto:David Benito/gettyimages

 まず、ガバナンスの問題だ。試験が認証法規に準拠した状態で実施されたかをチェックする仕組み、ガバナンス(管理・監督などを行う)体制が不足していた。

 次に、手順の不備があった。認証法規に準拠した試験実施の手順が十分ではなかった。

 そして、設備の不足だ。認証法規に準拠した試験条件を安定的に満たす設備の整備が不足した。マツダは改善策に、チェックや管理体制の強化、手順書の見直しと教育などの強化、設備の整備強化を挙げた。

 一方、トヨタの公表内容を見ると、一般的に、安全性と環境性の認証は3つの方法があるという。(1)試験時、認証機関の審査官が立ち会う、(2)メーカーが試験を行い、データを提出する、(3)開発試験で有効なデータを認証データとして提出する。トヨタは(2)と(3)で認証の不正が起きた。

 各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。自社の製造技術は高い。完成車の性能に問題もない。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。

 生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない。

 ただ、いずれも経営トップの責任であることは間違いない。本来、経営者は社会的責任を果たすために、抜き打ちで試験の実施体制を検証すべきだ。時代にそぐわない認証基準があるなら、当局に掛け合い、実態に即した認証体制を確立する必要もあった。根本的な原因は、経営者にあると考えられる。他の分野でも決して他人事ではない。