AIは長嶋語を
理解するのか?

暦本 チャットGPTがオノマトペをどこまで理解するか。「ここをヒョイッと直して」と「ヒュイッと直して」とで、結果が違ったりして。「語尾をモフモフさせてください」とかいいたい(笑)。

落合 ちょっとフワッとしているから、もっとカチッとした文章にしてください、ぐらいは理解してくれますよね。みんながよく使うオノマトペだから。

暦本 ハッピーハッキングキーボード(*3)の新製品が出たときに、ユーザーが前との触覚の違いをオノマトペで語っていたんだけれど、「前のはスコスコで、今回の新作はホコホコだよね」とかいうと、日頃からあれを使っている人にはめちゃめちゃよく伝わるんですよ。「ああ、たしかに前はスコスコでこれはホコホコだ」と。でも使ったことのない人が「スコスコ」「ホコホコ」という言葉を耳で聞いただけでは、ただのカタカナとしか認識できない。たぶん、オノマトペは音と触覚などのほかの感覚が統合された認知なんでしょうね。だから、ハッピーハッキングキーボードをいつも触っている人たちのあいだでは「ホコホコ」が共通言語になる。

落合 たしかに、あれは「ホコホコ」です(笑)。

暦本 実際にキーを叩いてもらえれば、どっちが「スコスコ」でどっちが「ホコホコ」かは、ほとんど百発百中でわかると思いますけどね。心理学の「ブーバ/キキ効果」みたいなもので。ギザギザに尖った感じの図形と、グニャグニャした丸っこい図形を見せて「どっちがブーバで、どっちがキキか」と聞くと、大多数の人が前者を「キキ」、後者を「ブーバ」と答える。これは音と視覚が統合されて、みんなの共通認識になるわけですね。

AIがオノマトペを
言語化する未来

落合 一方にはそういうオノマトペでしか触感を表現できない人類がいて、一方にはキーボードの触覚を物理現象として理解して、ハプティクス(*4)のグラフを描いたりする人類がいるわけですよね。この両者は共通言語を持たないけれど、あいだにAIが入ればコミュニケーションが取れる。「スコスコ」と「ホコホコ」のダイナミクスをフィッティングすると、それぞれグラフはこんなカーブを描きます、みたいな。