進まない避難所建設の救世主
「ムービングハウス」の可能性
という話をすると、「偉そうに言っているけれど、じゃあどんな対策があるのさ?」と思うだろうが、今からでもやれることは山ほどある。たとえばそのひとつが、「ムービングハウス」だ。
ムービングハウスとは、国際規格の海上輸送コンテナと同じサイズ(長さ12メートル、幅2.4メートル)の移動式木造住宅のことだ。筆者は能登半島地震の9日後に《“クレイジー”な日本の避難所を救う 「ムービングハウス」とは何か》という記事で、このムービングハウスを国策として普及させて、全国自治体で備蓄品にすべきだということを提言させていただいた。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2401/10/news020.html
実は今回の能登半島地震の前から、ムービングハウスの普及を行う日本ムービングハウス協会は、さまざま自治体と災害時の仮設住宅建設で協定を結んでいる。なぜかというと、「人手不足と資材不足で仮設住宅ができません」という状況を回避できるからだ。
ムービングハウスはコンテナと同サイズということで大型トレーラーに積載してそのまま輸送できるので、道路さえ復旧すればすぐに被災地へ集められる。現地に建設業者が入ってプレハブを建設するよりもはるかに人手が少なくて済むことは言うまでもない。
しかも、きちんとした避難所を建てるとなると地主などと交渉をしなくてはいけないが、置くだけなので用地確保は簡単だ。設置後は電気・上下水道、ガスに接続すれば、すぐに生活ができるので、被災者にとってもありがたい。
そのスピード感は折り紙付けで、実は石川県内で初めての仮設住宅は輪島市に設置されたムービングハウスだった。
また、使い回すことができるというメリットがある。仮設住宅は建ててしまうので、被災者が出ていけば取り壊すためまた費用がかかるが、ムービングハウスは用済みになれば、別の被災地に移動すればいい。しかも、平時は研修の宿泊施設や事務所などに使ってもいいので、ムダがない。
まさしく地震大国ニッポンにピッタリな災害支援システムだが、石川県は被災するまでムービングハウス協会と協定を結んでいなかった。能登地震後の2月に協定を結んだのである。もし仮に、もともと石川県が協定を結んでいて、県内の各自治体にムービングハウスを備蓄したり、他県から受け入れる体制を整えていたりしたら、今のような状況になっていなかったかもしれないのだ。