祇園祭で授かりたい御利益と宵山グルメ3選
祇園祭のお楽しみは、見物するだけにあらず。「御利益」も存分に授かれます。
ちまきといえば、端午の節句に食するお菓子のちまきや、味付けしたもち米を竹や笹の葉でくるんで蒸した中華ちまきを思い浮かべる方も多いかと思います。しかし、祇園祭のちまきはといえば、「蘇民将来之子孫也」という護符が添えられた宵山期間に各山鉾町で授かることができる「厄除けちまき」でしょう。
第13回「夏越の祓(なごしのはらえ)」で茅の輪の由来が「蘇民将来」の逸話にあることお伝えしましたが、厄除けちまきの由来もほぼ同じ。一夜の宿を求めたスサノヲノミコトに対し、裕福な弟の巨旦(こたん)将来は素っ気なくあしらいますが、貧しいながらも心豊かな蘇民将来は温かく迎え入れました。
もてなしへの礼としてスサノヲノミコトから「この先疫病が流行っても、蘇民将来の子孫だと言って茅の輪を腰に付けておけば免れられる」と告げられ、それに従った蘇民将来とその子孫は疫病に見舞われることがなく末代まで繫栄、巨旦将来は一族もろとも疫病で亡くなってしまったのです。
厄除けちまきは、自宅の玄関先に掛けておくのが正しいお飾りの方法。無事に一年を過ごし、次の新しい厄除けちまきを授かるときには、感謝の念を込めて八坂神社の札所に古い厄除けちまきを納めます。八坂神社への参拝がかなわない場合は、家の近くの神社、できればスサノヲノミコトを祀る神社の札所に納めてお参りするといいでしょう。
各山鉾で授与される厄除けちまきには、厄除けの御利益のほか、縁むすび、商売繁盛、不老長寿、雷除け、迷子除けまで、ご神体にまつわる故事に由来する多彩な御利益も。たとえば、らくたびが奉仕させていただいている「郭巨山」のご神体は、中国史話「二十四孝」の一つ「郭巨釜掘り」の故事を表しています。貧しさゆえ母と子のどちらかを捨てなければ生きていけない……。
そんな究極の選択を迫られた郭巨は、悩み抜いた末に親孝行を選び、子を埋めるべく涙ながらに土を掘ります。すると、土の中から黄金の釜が現れ、母と子の両方を養うことができたのだとか。これにちなんで郭巨山の厄除けちまきには、金運の御利益があるといい、厄除けちまきには紙製の小判が添えられています。このように、授かりたい御利益に合わせて山鉾を巡るのも宵山の醍醐味(だいごみ)です。
祇園祭のちまきの中には、食べられるものもあります。甘春堂(東山区上堀詰町)の「祇園ちまき」は、葛製(プレーン・黒糖)とようかん製の3種がそろいます。また、後祭の宵山期間、鷹山の前で販売予定の厄除け札付き「厄除け 生ちまき」もおすすめです。
宵山期間中は、山鉾巡りと合わせて宵山グルメもハシゴしましょう。鉾町にある飲食店では、店先でビールや冷たいドリンク、かき氷などを販売しているのを見かけますが、なかには祇園祭限定という魅惑のグルメも。
ダントツ人気は、中華料理店「膳處漢ぽっちり」(中京区天神山町)で13~16日の4日間のみ販売される「しみだれ豚饅(ぶたまん)」でしょう。一般的な豚饅の2倍ほどもあるビッグサイズで、甘辛醤油ダレを塗り込んだ皮を割ると湯気とともにジュワ~ッと肉汁があふれ出てくる人気メニュー。夕刻は行列必至なので、午前中がねらい目です。
スイーツ系では、つくだ煮と和菓子の二大看板を掲げる「永楽屋 室町店」(中京区鯉山町)の「水あずき」。飲む水ようかんと呼びたくなるような、サラサラとのどごしのよいあんこドリンクです。
らくたび的イチオシは、和食店「酒菜食房いち」(中京区小結棚町)の「はもカツバーガー」。祇園祭のハレの料理でもある「ハモ」をサクッと揚げ、京都・大原特産のしば漬けを小さく刻んで混ぜ込んだタルタルソースをとろりとかけた逸品。ビールとの相性も抜群です。
ちなみに、祇園祭にはNGの食材も存在します。神事に深く携わる人たちにとって、祇園祭の期間中、控えなければならない食べ物は、なんとキュウリ。切断面を思い描いてみてください。八坂神社の神紋(木瓜紋)と似ていることから、食べるのを避ける慣習になったようです。
さあ、日本を代表する夏の祭りが盛り上がりを見せます。見て、食べて、存分に満喫してください。