太田さんの職場は、男性上司も長期の育児休業を取っている。管理職の育休は業務過多で取りづらいと言われる中で、上司が率先して育休を取って風土を醸成しているところは、他の企業の手本となるだろう。太田さんは、職場が柔軟な働き方を推奨している点を、戦略的に使っている。

「職場では、自分の方が融通が利くと公言していました。その理屈で、育児も融通が利く自分がやらなければならない、と周りに主張していました」

 公言した通りに育休を取得し、復帰後もフレックス制度を使って固定の曜日は早く帰ることをあらかじめ職場に周知した。固定化することで、周囲の理解も進んだと言う。そして公言して実行する重要性をこう語っている。

「自分のような働き方を周りの人にもわかってもらいたくて、わざと大げさに言っています。浸透させたいし、その方が自分自身にもいい方向に行くと思うからです」

家事全般を夫が担う
育休中の父親の過ごし方

 次に、育休を取得した男性が、育休中にどのような育児をしていたのか少しご紹介したい。前述の太田さんの家事・育児の内容はこうだ。

「自分の育休中は、食事の準備、掃除、洗濯と、家事を全部やりました。配偶者と相談の上で、赤ちゃんの世話以外は全部やることにしました。母体を保護するためになるべく動いてはダメ、と聞いていたので、全部やることにしたのです。大変でした。特に3食分の献立を考えるのが大変でした。結局、途中から、『食事は全部作るからメニューは考えて』、と妻と取引して、そこだけは分担しました。こういう取引や理屈の言い合いは日常茶飯事。料理は昔からしていたので苦ではなかったです」

 夫婦で時には言い合いもしながらも、お互いの得意分野を活かしてできることは何でもしたという、太田さんの奮闘ぶりがよくわかるエピソードだ。