【1分読み切り】「嫌われる勇気」も大切ですが、もう1つ大切なことを忘れないでください。
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【精神科医が教える】「嫌われる勇気」にプラスして、もう1つ大切な勇気とは?Photo: Adobe Stock

「認めたくない」という心理

『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)というベストセラーのことを、多くの方がご存じだと思います。素晴らしい内容なので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

ただ、アテクシは「嫌われる勇気」だけでなく、「嫌う勇気」も大切だと感じています。

人を嫌うとき、ネガティブな感情を抱きますが、そのことを認めたくないという気持ちも同時に生まれます。

“酸っぱいブドウ”の話

これは心理学的に「防衛機制」と呼ばれる現象で、なにかストレスや苦痛を感じたとき、不安をやわらげるために、無意識に自分を守ろうとするものです。認めたくない事実や現状に対して、自分の気持ちを変えたり、加工したりすることもあります。

イソップ寓話に「キツネとブドウのふさ」という“酸っぱいブドウ”の話があります。キツネが木にぶら下がるブドウをとって食べたいのですが、何度飛び上がっても届かない。

そこでキツネがどうしたかというと、本当はブドウを食べたいのに、「あのブドウは酸っぱいから食べなくてもいい」といって、その場を去ってしまうのです。

本当は欲しいけれど手に入らないものを「実はおいしくない」と思い込むことで、葛藤を乗り越えようとしたわけです。これと同じように、本当は相手が嫌いなのに、その感情を認めたくないという人も多いのではないでしょうか。

自分の感情を認めてあげる

しかし、「嫌う勇気」も大切なのです。ここで言う「嫌う」とは、誰かをいじめたり悪さをしたりすることではありません。単に「この人があまり好きではないかもしれない」と自分の感情を素直に認めることです。

たとえば、親や子どもなど、身内に対して「嫌い」という感情を持つことは、多くの人にとって受け入れがたいものです。しかし、その気持ちにフタをしてしまうと、自分の心に嘘をつく癖がついてしまい、自分の本心がわからなくなってしまう可能性があります。

また、無理をすると偏屈になったり、素直に感情を表現できなくなったりする恐れもあります。そのため、「この人のここが嫌いだな」と思うことや理解することは、とても大切なことなのです。

口に出す必要はない

友人に対してでさえ、「もしかしたら私は、この人のことが嫌いなのかもしれない」と認識することは、決して間違いではありません。

ただし、これは人に言うべきことではありません。それは悪口になってしまうからです。しかし、自分のなかで「この人とは合わないかもしれない」「このタイプの人が苦手かもしれない」と認識することで、新たな気づきや成長につながる可能性があります。

“負の感情”であっても否定しない

もちろん、単純にレッテルを貼って、「この人は嫌いでダメな人だ」と決めつけるのはよくありません。大切なのは、自分のなかに「嫌い」という“負の感情”があっても、それを素直に認めることなのです。

自分の感情に素直になることで、より健康的な心の状態を保つことができるようになります。