県知事に求められる
能力とは

 その後、さまざまな匿名の証言がメディアにおいて取り上げられるようになり、議会のみならず記者会見においても本疑惑に関する質問は増えていったわけだが、斎藤知事はパワハラ疑惑については全面的に否定。20メートル歩かされただけで怒鳴り散らした件についても「業務上必要な範囲内での指導だったので、ハラスメントに該当する認識はない」と釈明している。

 贈答品疑惑、告発文書の言葉を借りれば「おねだり体質」についても同様であるが、これまた同様に、疑惑を否定し続けている。そうした中で、元局長は100条委員会において証人として喚問される予定であったが、それを前に死亡した。自殺と見られている。他にも同告発文に関連する県幹部が死亡している。死亡者まで出た、この疑惑、今後どう解明されていくのだろうか?

 しかし、その前に、なぜこのようなパワハラ疑惑がここまで大きな話になったのか?それを考えるかぎは、県知事とは何かというところにあるのではなかろうか。

 県知事とは地方公共団体である県のトップである。都道府県や市町村のトップを総称して首長と呼ぶが、地方公共団体は行政機関であるから、首長とは行政機関の長であるということができる。

 行政機関であるからには、その機関を運営し、必要な意思決定を行う能力や知見、経験が必要である。つまり、行政機関における経験や知見が必要であるということであり、元官僚や地方公務員の首長というのはまさにその能力についてはうってつけということである。その点では斎藤知事は相応しいと言えよう。

 ただし、首長は選挙で選ばれる政治家としての側面も持ち合わせているので、行政官としての知見や経験に加えて、県議会議員やその地方公共団体を地元選挙区とする国会議員、さらには同じ地方公共団体内の首長や地方議員たちと上手な関係を築き、渡り合える能力も重要である。

 もちろん、地方公共団体と言っても県ともなれば大組織であるので、知事はそれを率いらなければならない。あらゆる問題、あらゆる部局に知事が首を突っ込むわけにはいかないので、県の職員たちと良好な信頼関係を築き、任せるところは任せ、最終的な決断や責任を知事が担う、そうした能力も求められる。

 今回の疑惑で言えば、まさにこの能力が、斎藤知事についてはどうだったのかというところがポイントだろう。