納豆はスーパーフード
1日1パック摂るのがベスト

 乱れた食生活が、体の健康だけでなく心の健康にも害をなす。それらの問題を根本的に解決するには「やはり食生活の改善が必要」と、満尾氏は語る

「食事でストレスケアを行うなら、ビタミンDの摂取が欠かせません。ビタミンDは日光に当たることで皮膚に生成されたり、サケや青魚に豊富に含まれている栄養素です。また、ビタミンDには、うつ病をはじめとした精神疾患の予防・改善に有効という研究結果が多数あります。そのほか、魚に含まれる『オメガ3脂肪酸』にも、メンタルヘルスを適正化する作用が認められているので、ストレス過多なビジネスパーソンにはもっともおすすめの食材です。加えて、近年では小魚などに含まれる『リチウム』という栄養素に関して、眼房水中のリチウム濃度と自殺の関連性を示す研究(*)が話題になっていますね」
(*)…Comparison of lithium levels between suicide and non-suicide fatalities: Cross-sectional study(by Shuntaro Ando**, Hideto Suzuki, Takehisa Matsukawa, Satoshi Usami, Hisanori Muramatsu, Tatsushige Fukunaga, Kazuhito Yokoyama, Yuji Okazaki, Atsushi Nishida)

 眼房水とは、眼球内の角膜と水晶体のあいだを循環し、眼圧を一定に保つ液体。自殺で亡くなった人の眼房水は、自殺以外の要因で亡くなった人に比べて“リチウム濃度が低い”との解析結果が出ているという。

「リチウムは、攻撃性や衝動性を抑えて自殺を防ぐ“ハッピーミネラル”として、今後さらに注目を集める可能性が高い。そんなリチウムを補う代表的な食材が、煮干しやアンチョビなどに使われる“カタクチイワシ”です。子どもの頃はおやつとして煮干しを食べていた人も今は縁遠くなっていると思うので、この機会に煮干しを食べる習慣を身に着けましょう。何より、魚介類は優秀なたんぱく源なので、肉類中心の食生活をしている人は、魚を食べる頻度を増やすのがベストです」

 一週間のうち、半分は魚(小魚、カツオ、サバ、イワシ、サバ)を食べ、残りの半分では鶏肉、卵、豆を食べるのが理想的なタンパク質の摂取方法とのこと。バランスよく幅広い食材から摂るのが基本だ。

 もしも、忙しさから食事がおろそかになってしまう場合は「1日1パックの納豆」と「ローヤルゼリー」を取り入れてほしい、と満尾氏。

「納豆にはビタミンKが豊富に含まれています。ビタミンKには、動脈壁からカルシウムを抜き取って骨に移動させる働きがあり、骨を丈夫にしたり、動脈内でのカルシウム沈着を起こりづらくして動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞を予防したりと、疾患のリスクを下げる効果が期待できるのです。もう一つのローヤルゼリーは、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど40種類以上の栄養素をバランスよく含むほか、近年の研究で、身体中の細胞のもとになる「幹細胞」を活性化させることが分かってきており (※1) 、血液、肌、筋肉など全身の老化予防が期待できます。さらに、腸管免疫を活性化させる (※2) ことで、免疫力を維持するのに役立つ作用もあります。サプリメントのローヤルゼリーならば、手軽に入手できますね」
※1…山田養蜂場健康科学研究所(https://www.bee-lab.jp/lp/stemcell/
※2…山田養蜂場健康科学研究所(https://bee-lab.jp/lp/dekansan/

 サプリメントや健康食品は、あくまで日々の栄養不足を補うアイテム。食品からの栄養摂取と併せて飲むのがコツだ。

「今日の不摂生が翌日に跳ね返ってくるわけではなく、毎日の食事が10年後、20年後の自分を作ります。逆に言えば、1日暴飲暴食をしたからと言って、すぐに健康を害するわけではありません。金曜は会食で飲み過ぎたから、土曜は体にやさしい和食にしよう、など1週間スパンで食事と体調のコンディションを整えるのが継続のコツ。毎日の食事を厳しく管理しすぎると挫折してしまうので、自分で調整しながら健康資産を積み上げていきましょう」

 体と心を健康に保つ“食”によるストレスケア。さっそく今日からはじめてみよう。

<プロフィール>
満尾正(みつお・ただし)
満尾クリニック院長・医学博士
1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経たのち、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を2002年に開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。キレーション治療の経験は延べ5万件を超える。『ハーバードが教える世界最高の食事術 食べる投資』(アチーブメント出版)など著書多数。