JR九州は7月19日、鉄道運賃の値上げを国土交通省に申請したことを発表した。実施予定日は2025年4月1日で、平均の改定率(値上げ率)は普通運賃が14.6%、新幹線特急料金が12.4%で、通勤定期については30.3%の大幅な値上げとなる。1996年以来、29年ぶりの値上げに踏み切った理由とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
普通運賃は平均で14.6%の値上げ
初乗り運賃は170円から200円へ
JR九州は7月19日、国土交通大臣宛てに鉄道事業の旅客運賃および料金の上限変更認可申請を行ったと発表した。実施予定日は2025年4月1日で、平均の改定率(値上げ率)は普通運賃が14.6%、新幹線特急料金が12.4%で、通勤定期については30.3%の大幅な値上げとなる。
値上げは一律ではなく、初乗り運賃は170円から200円へ17.6%の値上げ。100キロ以下は区間ごとに14~20%超の値上げ、101キロ以上300キロ以下は1キロあたりの運賃(賃率)を約11%値上げし、301キロ以上の賃率は据え置く(301キロ以上の運賃は、300キロ分の運賃と301キロ以上の運賃の合計なので、300キロ以下の値上がりの影響を受ける)。
利用者数が多く、他の交通機関に逃げづらい近距離区間を中心に値上げし、高速バスなどと競合する中長距離利用は値上げ幅を抑えた格好だ。
JR各社は民営化以降、可能な限り運賃を据え置いてきた。これはJR各社の経営が順調だったことや、デフレ経済の影響もあるが、国鉄改革における「運賃は値上げしない」という自民党の公約が強く働いたからとも言える。
とはいえ各社の経営陣も、民営化からしばらくは運賃を据え置いたとしても、いずれは運賃値上げが必要になるというのが共通認識だった。
JR東日本初代社長の住田正二は1992年の著書『鉄路を夢にのせて』で「今後ともできるだけ値上げしないで済むような企業体質にしたい」としながらも、「JR発足後、10年経つと固定資産税の緩和措置が消え、年間500億円もの実質増税となってしまう」として、将来的な値上げの必要性に言及している。