最もコストがかかる利用者の割引率が
最も高いというジレンマ

 ここで注目すべきは、三島会社いずれも通勤定期券の大幅値上げに踏み切った点だ。JR各社は元々、私鉄や公営鉄道と比較して定期券の割引率が高かった。これは国鉄ではかつて、運賃制度が法律(日本国有鉄道運賃法)に規定されており、定期運賃についても「通用期間一箇月又は三箇月の定期旅客運賃は、普通旅客運賃の百分の五十に相当する額をこえることができない(第五条一項)」と定められていたからだ。

 民営化と同時に同法は廃止されたが、前述のように、本州3社は一度も、また、三島会社も2019年まで一度しか運賃改定を行わなかったため、この割引率が今も引き継がれている。私鉄、公営鉄道の割引率は3~4割強が主流なので、JRだけ突出して大きかった。

 鉄道利用に占める定期券の割合は、東海道新幹線中心のJR東海を除けばいずれも5割以上で、北海道・四国・九州は特に高い。定期利用は基本的に朝6~9時の3時間に集中するが、鉄道事業の車両・設備・人員は、運行本数が最も多い朝ラッシュ時間帯を基準にそろえなければならない。鉄道事業者から見ると、最もカネがかかる利用者なのに割引率が最も高いというジレンマがある。

 JR九州は今回の運賃改定申請で、通勤1カ月定期券の割引率を平均51.7%から46.7%、通勤3カ月定期を54.4%から49.0%、通勤6カ月定期を60%から53.5%に引き下げる。大手私鉄で割引率が最も高いのが名古屋鉄道の45.1%(通勤1カ月定期)なので、ようやく大手私鉄の水準に近付いたと言える。