値上げに向けて
動き出すJR東日本

 本州3社にも動きがみられる。JR西日本は今年5月、「大阪環状線内」「電車特定区間」「幹線」それぞれに設定されている賃率を統合し、新たな「電車特定区間」を設定する運賃改定申請を行った。

 大阪環状線内は値上げ、新たに特定区間に含まれる幹線区間は値下げとなり、運賃収入全体としては増収にならない想定であり、三島会社の値上げとは事情が異なるが、民営化以来手付かずだった運賃体系にメスを入れるという意味では、今後の運賃改定の足掛かりとなるものである。

 本格的な値上げを検討しているのがJR東日本だ。同社の喜勢陽一社長は共同通信のインタビュー(『47NEWS』2024年5月31日付)で、国土交通省が間もなく公表予定の「基準コスト」をふまえ、「値上げの余地があれば最速で申請したい」と述べている。

 鉄道運賃は「総括原価方式」のもと、人件費・経費・減価償却費などの営業費に、支払利息・配当金などの事業報酬を加えた「総括原価」を、総収入が上回らない範囲で「上限運賃」が設定される。

 とはいえ、事業者の言い値で原価を決めてしまうとコスト削減のインセンティブが働かない。そのため、各社共通で比較可能な5項目(線路費、電路費、車両費、列車運転費、駅務費)については、JR6社、大手私鉄、地下鉄事業者など、それぞれ事業内容の近いグループごとに「基準コスト」を決定し、これを下回った分は事業者の利益とする「ヤードスティック方式」を取り入れている。

 つまり総括原価算出の材料が出そろった時点で即座に運賃改定の可否を判断したいというわけだ。

 JR東日本は2023年3月に「オフピーク定期券」を導入し、朝ラッシュのピークシフトを進めている。三島会社同様に定期券割引率の縮小に踏み込むのであれば、どのような価格戦略を取るのか気になるところだ。