「多くの人から応援されている、ある経営者がいました」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、リッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を応用した独自の手法を実践したことで、わずか1年で紹介数が激増。社内で表彰されるほどの成績を出しました。
その福島さんの初の著書が『記憶に残る人になる』。ガツガツせずに信頼を得るための考え方が満載で、「本質的な内容にとても共感した!」「営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと思う!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、人生でとくに記憶に残った経営の「ふるまい」について紹介します。
記憶に残った「保育園経営者」
法人営業をするなかで、これまでに何千人もの経営者と会ってきました。
そのなかでも、とくに記憶に残っているのが、20近くの保育園を経営する60代の凄腕経営者Tさんです。
彼がすごいのは、みんなが「えっ!?」と驚く挑戦をし続けるところです。多くの経営者は、怪我のリスクには万全に備えます。僕の友人にも、スキーや車の運転などを控える経営者がいます。
でもTさんは、スカイダイビング、サーフィン、ウェイクボード、最近ではキックボクシングを始めて試合にも出ているというから驚きです。
試合に出る前には社員に、「理事長、さすがにやめてください……」とお願いされる始末。それでもTさんは試合に出場したそうです。
挑戦し続ける「理由」とは?
「どうして、そこまでして挑戦を続けるのですか?」
僕は尋ねたことがあります。
その答えを聞いて、胸が熱くなりました。
「子供たちに“挑戦しろ!”なんて言ってるんだから、僕が誰よりも挑戦してなきゃダメでしょ」
子供たちにとっては、両親や保育園の先生たちが「大人」のすべてです。そんな大人が目を輝かせて挑戦していたら、子供たちだって「挑戦したい!」と思えてくるに違いありません。
実際、Tさんが経営する保育園の子供たちは、逆立ち歩きや側転ができたりと、運動神経抜群。強制的に教えているわけではなく、「それ面白そう!」と、子供たちが自らチャレンジした結果とのことでした。
僕もその保育園を訪れて子供たちと遊んだことがありますが、ついていくのがやっとでした……。
Tさんの「挑戦」する姿は、子供たちや僕の心に深く突き刺さりました。
「挑戦する気持ち」を与える存在になろう
挑戦は他の人にも波及します。
僕が挑戦する心を持てたのも、これまでに会ってきた経営者たちの影響でした。
法人営業をしていた頃、経営者のみなさんの「成長速度」に驚きました。とくに、創業したての経営者からは強い刺激をいただきました。安定した仕事や給与を捨てて独立したわけですから、僕なんかの何倍もの情熱を持たれているんです。
そんな経営者と一年後などに再会すると、「同じ人ですか?」と疑うほどに成長を遂げていることがよくありました。小さなビジネスだったのに、今では大手企業を相手に取引していたり、事業の幅が広がっていたり。
そんな成長し続ける経営者たちの姿を見て、営業を始めたばかりの僕は「自分も成長し続けなければ!」と、背中を押されました。
挑戦は、もちろん自分の成長のために必要不可欠です。でも同じくらい、その挑戦を見守ってくれている人にも良い影響を与えているんです。
だから挑戦している人の周りには、人が集まるんです。
(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数が激増し、社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。