荒らされたゴミ袋の放置は
餌付けしているのと同じ行為
1羽のカラスがゴミ荒らしをしている時間は意外と短い。カラスは警戒心が強く、ヒトや自動車の接近、何かの物音に気づくたびに、近くの電柱などへ避難するためだ。カラスは、ヒット・アンド・アウェイでちょこちょこ食べ物を取っていく。少しほじくっては、引き出して一部を持ち去る、ということを繰り返すので、結果としてゴミがとにかく散らかる。
一方、ゴミ袋から食べ物を取り出すことは、カラスからすると面倒である。図3-9のように、すでにゴミが散らかっていてほじくる必要がなければ、そちらを狙う。そのため、一度荒らされてしまうと、よりカラスに狙われやすくなる。カラスに荒らされないことも必要だが、それを放置しないこともさらに重要である。また、ネコなどほかの動物に荒らされ、散らかされてしまうことにも気を配ったほうがよい。
図3-10は愛知県某所の早朝の様子である。朝方にこのような大群を見ることは珍しい。しばらく周辺を歩き回っていると原因がわかった。どうやら、カラスに餌をあげている人がいたようだ。ある一角に行くと物凄い数のカラスがおり、その場には、大量の残飯が無造作に置かれていた。餌付けの跡である。図3-10の写真を撮影したときにはまだ餌はなかったが、あたりのカラスは餌をもらえることがわかっており、待ち構えていたようだ。
塚原直樹 著
このように、カラスは食べ物がある場所を覚える。そして、簡単に食べ物を得ることができる場所があれば、そこは毎朝のカラスの巡回ルートとなる。また、カラスは、群れが群れを呼ぶ傾向もある。ツヤツヤの健康そうなカラスがいれば、あいつはよい餌場を知っているな、とほかのカラスが追跡しているかもしれない。その結果、カラスの大群を招く餌場となり、対策が困難な場所となってしまう。カラスのゴミ荒らしを防ぐうえで重要なことのひとつは、簡単に食べ物にありつける場所だとカラスに認識させないことである。
その意味でも、前述のように荒らされたゴミを放置しないことは重要である。いちいちゴミ袋を破らなくても簡単に食べ物にありつける状況は、カラスにとってはとてもよい餌場と認識される。ゴミがよく荒らされている場所は餌付けしているのと同じと考えてもよいだろう。