あらためて中古物件における「コスパ」、費用対効果について考えてみよう。まず費用面では購入時にかかる(1)初期費用、さらに住宅を維持していく(2)ランニングコスト、この2つを念頭におく必要がある。

(1)の初期費用については、「自身が住宅購入にどの程度の予算をかけられるのか」が軸となるため、考え方はシンプルだ。ただし、中古物件の価格には「売り主」の意向も関わってくるため、場合によっては相場より割高に設定されているケースもある。

 そこで、過去の取引事例などから物件の相場を把握することが重要になる。過去の取引事例は、物件の仲介担当者に物件情報が登録されている専用のシステム(REINS:レインズ)を確認してもらう、不動産ポータルサイトで近隣の類似物件の売り出し価格を検索する、公的機関が公表する情報から調べる(例:不動産情報ライブラリ)などの方法で入手できる。

見落とされがちな
購入後のランニングコスト

 上記初期費用については、家を購入する際にほとんどの人が調べるコストだろう。一方で見落としがちなのが(2)ランニングコスト、物件の入居後にかかる維持管理費の部分だ。(2)は大まかに維持・修繕費と光熱費の2つを見ておかなければならない。

 1つ目の維持・修繕費の部分は建物を維持していくために必要なコストで、次の3点ついて考慮が必要だ。

●外装
 屋根や外壁、ベランダやバルコニーなど、まとまったコストが必要になる部分。購入後、どのくらいでメンテナンスが必要になるのかは、現状の傷み具合によって大きく変わってくる。さらに、屋根瓦や外壁材など使われている材料次第で負担する費用が異なる場合も。

●内装

●設備
 内装と設備も外装と同様、仕様次第で維持管理費用が異なる部分がある。一方、売り主がすでに交換しているケースでは、数十年間、メンテナンスが不要になる可能性もある。

 これら3点のいずれについても、どのくらいでメンテナンスが必要になるか、何年目にコストが増えるのかを見極めるため、現状の劣化具合を把握しておくことが大前提となる。その上で、使われている仕様や資材も確認しておきたい。

 例えば外装にあたる屋根材は、近年、耐震の観点から軽くて平らな素材(コロニアル、スレート瓦)などが用いられるのが一般的だ。一方、中古では重い陶器瓦を用いている住宅も少なくない。陶器瓦は重量があるため耐震上は不利に働きやすいが、耐久性には優れている。逆にスレート瓦などの素材は紫外線の影響などを受けやすく、劣化しやすいなど耐久性では劣る。住宅自体の耐震性が確保されているのであれば、陶器瓦を生かしたほうが維持コストは少なくなる可能性もある。

 外壁材も同様だ。外壁は防水・劣化防止のためシーリング工事が必要になる。耐久性に優れた素材、例えばガルバリウム鋼板やタイルなどはメンテナンスコストが低く抑えられるメリットがある。反対に外壁に薄く衝撃に弱い14mmサイディング(壁材)が用いられているケースではひび割れが発生して外壁材自体が傷みやすく、一般的なメンテナンスよりも大がかりになる可能性も出てくる。物件そのものの価格がリーズナブルであっても、素材次第では後々、大幅なコストが必要になるため、注意しなければならない。

 中古住宅にかかるランニングコストの2つ目が、先述の通り、光熱費に関する部分だ。猛暑など異常な気象条件が続く昨今、光熱費が家計に与える影響は年々、大きくなってきている。住宅における光熱費を左右するのが、建物の断熱性や省エネ性といった部分になる。

 断熱性や省エネ性を判断する材料としては、国が基準を定める「住宅性能評価」制度がある。2000年に新築からスタートした制度で、2002年には中古住宅を対象とした「既存住宅性能評価書」の交付もされている。共通ルールのもと、エネルギー消費量などさまざまな観点から客観的な評価がなされており、等級によって住宅の性能を判断することが可能だ。

 また2024年からは新たに「省エネ性能表示制度」が導入された。「新築建築物の販売・賃貸の広告などにおいて、省エネ性能の表示ラベルを表示することが必要となる」制度で、国を挙げて省エネ性能が高い住宅・建築物の供給を進めていくことを目的として掲げている。現状は新築住宅が中心であるものの、住宅の「省エネ性能」を明らかにする動きは、今後も広まっていくだろう。

 加えて住宅の断熱性能を判断する際、室内の熱が出入りすることが多い「窓」も大きな材料となる。例えば南側に開口部を大きく取った窓がある物件は、「日当たり良好!」とアピールされる場合も少なくない。確かにその通りではあるものの、夏場は暑い外気が入ってくるなど、断熱性に難がある点を考慮する必要がある。

 一方、窓のリフォーム自体は、以前よりも気軽に行えるようになった。かつてのように窓を1回解体し、新しい窓をつけるような大がかりな工事ではなく、既存のサッシの枠を利用して新しいサッシを設置するカバー工法、窓の内側にもう一つ「内窓」を設ける方法までリフォームの幅も広がっている。補助金が活用できる場合もあるため、コスト面でも検討の余地はあるだろう。

 光熱費といえば、オール電化の中古住宅を検討する方もいるかもしれない。オール電化は夜間から朝方にかけての電気料金が安いのが基本のため、ライフスタイルによってはかえって光熱費がかかってしまう場合もある。また専用の給湯器であるエコキュートの交換費用が割高になる点にも注意したい。