それは「コレステロールという物質は、体内で不足してきた時には、食事で増やすしかない」という理由です。

 人間は年齢とともに老化するので、肝臓の働きも衰えてきます。すると、コレステロールの生産量も少しずつ減ってきます。一方、年齢が上がるとともに、細胞は傷つきやすくなり、修復や再生産が必要になってきます。つまり、高齢になるほど、コレステロールの消費量が増えるのです。

 肝臓で作られるコレステロールの量は不足しているのに、必要とする量は増えていく。この状況を改善するには、食事から摂るしかありません。確かに、食事で補充できる量は少ないのですが、ないよりはマシです。

 イメージとしては、細胞修復や体を機能させる分のコレステロールは、肝臓で生産した分を使い、男性ホルモンや免疫細胞を強化する分は食事から補う、といった感じです。もちろん実際に体内では、この使い分けをしているわけではありませんが。

 いずれにしても、高齢になったら「元気や活力の源になるコレステロール」は食事で摂っていかない限り、不足してしまいます。肉、魚、卵、牛乳……。百寿者が長命で元気を維持できたのも、若い世代以上によく食べていたからです。まさに“論より証拠”なのです。

油を抜くのは危険
肌も髪もカサカサになる

 油についても話しておきましょう。

 以前、私が診た患者さんの例です。「咳が止まらない」と来院したその女性は、肌や髪がカサカサで、75歳くらいに見えました。カルテには64歳とあるので、実年齢よりもだいぶ上に見えたのですね。くわしく話を聞いていると「油抜きダイエットをやっている」と仰います。「美容のためですか?」と聞くと「健康と美容のためです。テレビで油を抜くといいと放送していたので」と。“油抜きダイエット”が流行っていた頃の話です。

 この方だけでなく、当時は同じような患者さんはかなりいたようです。男女ともに共通していたのは“油切れ”を起こしたように、肌に艶やハリがないことです。症状はみなさん違いますが、この患者さんの場合は肺炎でした。