中には「体脂肪率が逆に上がってしまった」と嘆く方もいました。私は、油の摂取を減らしてしまう弊害を、改めて実感したわけです。

 確かに、脂を体内に大量に溜め込んだ状態は、よいとは言えません。しかし、適量の脂は人間にとって欠かせません。体に元気を与え、滑らかな動きを助けてくれます。関節の動きもそうですし、便も出やすくしてくれます。

 日々の活力やパワーの起爆剤にもなります。文字通り「潤滑油」であり、不足すると体がスムーズに動かなくなってしまうのです。

どんな脂肪をどれくらい
摂ればいいのか

 患者さんに脂肪の話をすると、よく次のような質問をされます。「どんな脂肪がいいのですか?どれくらい摂っていいのですか?」というものです。

 私の回答はこうです。「どれか1つの油に限定するのではなく、満遍なく摂ったほうがいいですよ。1日何mlという適量もありません。もちろん浴びるほど摂る人はいないでしょうし、料理がおいしく食べられる量ならいいと思います」と。

 脂肪については「体によい脂肪」と「体に悪い脂肪」と分けられることが多いのですが、一概にそれは言えないと、私は思っています。どの脂肪にも、よい面と悪い面があるからです。

書影『コレステロールは下げるな』(幻冬舎)『コレステロールは下げるな』(幻冬舎)
和田秀樹 著

 かつてはバターやラードなどの動物性脂肪の悪い面ばかりが指摘され、「植物性脂肪が体にいい」となり、マーガリンが脚光を浴びたこともありました。

 ところが今はどうでしょう。「マーガリンは健康によくない」と言われるようになり、反対に動物性脂肪のよさが見直されてきています。

 なので、流行に乗り「○○油がいい」と一辺倒になるのではなく、満遍なく摂ったほうがいい、というのが私の考えです。

 とくに高齢になったら、積極的に摂ることをお勧めしています。コレステロールも脂肪の一種ですが、前にも話した通り、年齢を重ねるほど、体内で枯渇してくるからです。すると、元気や潤いがなくなってしまうばかりでなく、病気に対抗できない弱い体になってしまうのです。