ほめ言葉を素直に受け取らない人に出会ったことはないだろうか。率直に「すごいですね」と伝えても、「いえいえ、私なんか」と返されてしまう。謙遜や照れが理由のようにも見えるが、実はほめ言葉を伝える側にも問題があるのかもしれない。心理的距離を縮め、相手に本当に響くほめ方とは? その詳細を教えてくれる本が、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。今回は、同書から特別に抜粋。頭のいいリーダーの効果的なコミュニケーション術を紹介する。
謙遜しすぎる人は警戒心の強い人
謙遜しているのか照れなのか、ほめ言葉を受け取ってくれない人がいます。
「すごいですね」と言われたら、「いえいえ、私なんか」と答えるのが定番。そういう人が多いようで、コミュニケーション・スキルの本には、「ほめられたら、ありがとうと返しましょう」とほめられたときの心得が書いてあります。
しかし、ほめ言葉をストレートに受け取ってもらえないのは、謙遜や照れという「相手側の問題」だけが理由でしょうか? 私の長年の考察では、ほめ言葉を口にする側にも問題があるようです。
×「あなたは素晴らしく優秀です」
こう言われたら、どう感じるでしょうか? うわべだけのリップサービスとか、上から目線の評価と感じる人もいます。へたをすると、警戒心をもたれることさえありえます。
主観を「I」メッセージで伝える
もともと多くのコミュニケーションで、ほめ言葉は取引のために使われてきたことがあるかもしれません。つまり、「ほめる」ことと引きかえに何らかの「要求」を受け取ってもらおうという意図があるのではと勘ぐられてしまうのです。
特に「あなたは」というYOUメッセージでは、取引のために発言者が評価し、ほめていることが伝わる可能性が高まります。
ここでは評価ではなく、謙虚に主観を伝えることが大切です。そのために「私は」というIメッセージをおすすめしています。
○「私はあなたのおかげで助かりました」
飾らない表現が重みをもって響き、評価ではない素直な気持ちが相手にスッと伝わります。これがIメッセージでシンプルに想いを伝えるポイントです。
ほかの例としては、「私は元気をもらった」「私は感動した」などの表現もあります。
「私は感動した」の有名な例は、2001年の大相撲夏場所で横綱の貴乃花がケガに耐えて優勝したとき、内閣総理大臣杯を授与する際に当時の小泉純一郎元首相が口にした「感動した!」のコメントです。
ここには「私は」が入っていませんが、気持ちは十分に伝わります。